Macaroons #5 -雪男短編集-

■貴方は今宵もプリンセス -mmab- ページ22

mm(22) ab(23) コンカフェパロ


仕事終わり、日付が変わる1時間前に目黒はその扉の前で息を整える。よし行くぞ、と気合を入れてゴシック調の扉を開くと、「ようこそ！」という声が店内から上がる。
分かってたけど人多いな、と店内を見回し、メインカウンターではない方の隅に腰かける。

ここはメンズコンセプトカフェ『Snow World』。雪コンセプトのメンコンで、キャストは6人。
大学の先輩であり今も連絡を取り合う仲の佐久間に誘われてやって来たのが始まりだった。尚、佐久間はキャストの1人であるテル＿深澤辰哉の友人である岩本に誘われて初来店したのだとか。

最初こそ酔ったノリでだとか、佐久間に誘われて仕方なくといった感じで来ていたのだが、とあるキャストに一目惚れしてからは来れる時には来るようになっていた。おかげで常連客である。

そしてこの日は、目黒のハートを射止めたキャスト、ナツメこと阿部亮平のリアルバースデー、誕生日である。
コンカフェではお馴染みのリアバカウントダウン。簡単に言えば、誕生日を一緒に迎えてお祝いしよう！というもの。

昨年のリアバはまだ知り合ってもいなかったため祝えなかったが、今年こそはと金を貯めに貯めてきたのだ。生誕祭ももちろん貢ぐが、リアバも貢ぐつもりである。


「お疲れめめ。ナツメ今向こうで忙しいから、暫くは俺で我慢して」
「全然大丈夫。エンドと話すのも楽しいし」
「そりゃどうも。チャージにする？」
「うん。チャージの…烏龍茶で。あとキャスドリも」
「ナツメに入れる？」
「ミツヤも含めて皆分。どうせ今日は閉店まで居るつもりだし」
「了解、ありがとな」


向こうで楽しそうにゲームをしている本日のもう1人のキャストであるミツヤ＿向井康二。彼にもキャストドリンクを出して一度全員をこちらに呼んで乾杯をして、阿部に残ってもらおうという魂胆である。

この店で目黒は「ナツメ限界オタク重課金勢」で定着してしまったらしく、阿部の手が空いていない時はキャスト全員が「俺でごめん」的なことを言いながらオーダーを取りに来る。当の目黒は申し訳ない気持ちでいっぱいなのだが。

4人でいただきますの乾杯を行い、そのまま流れるように阿部だけが目黒の目の前に残る。
阿部にとっては貴重なトップオタクであり、人としても個人的に好いている人物だった。メンコンということもあって女性客が多い中、珍しい男性客というのもあるだろうが。


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