Macaroons #5 -雪男短編集-

■祭囃子、あとのまつり -iwfk- / Req ページ16

『祭囃子の鳴く頃に』続編


＿＿深澤


「ひかるー、これどうやって使うのー」
「それ……は俺あんまり分かんないから舘さんに聞いて」
「舘さんってどの人だっけ」
「舘さんは烏天狗だから、黒い羽根が生えてる人」
「りょうかーい」


人間を捨ててからというものの、それはそれは物凄く快適に生活させてもらっている。
前みたいに歩くだけで疲れるとか、倒れるんじゃないかっていう恐怖とかがまるでない。健康であるって本当に大事なんだなって感じ。

未だに前世がなんだのとかは分からないし、照以外は誰がどれとかもほとんど覚えられていない。
まぁ半永久に時はあるんだから、ゆっくり覚えていけばいいかと思って気にしていないのだが。

下っ端らしい狐くんが部屋に持ってきてくれたはいいものの、使い方が分からない謎の黒い物体を持って舘さんと呼ばれた烏天狗を探し回る。


照の周りには7人の上級妖怪と呼ばれる側近のような存在がいる。周りの妖怪からも一目置かれており、その力は人間1人程度なら息をするように消し飛ばせる程のものらしい。

先程から名前が出ている舘さん、基宮舘涼太は烏天狗。
俺を迎えに来た時に最初に会ったのが、猫又の佐久間大介。
その次に会った手に目があるのが、手の目の阿部亮平。
俺の心を読んできたやつが、覚の渡辺翔太。
こっちに来てから世話を焼いてくれたのが、木霊の向井康二。
すごい俺に優しくしてくれるイケメンが、女郎蜘蛛の目黒蓮。
めっちゃ可愛い照の息子みたいなのが、座敷童子のラウール。なんで横文字？

…とまぁ、こんな感じで名前と種族は叩き込んだのだが、誰がどれかが分からない。名前と顔が一致しない、というやつだ。
何せ病室暮らしだったもんだから、妖怪なんていうのにも勿論疎い。名前が分からど姿が分からないのだ。


フラフラと日本家屋の屋敷をさ迷っていると、緑色の優しいオーラを纏い、光の無い大きな黒目を持ち、白装束にも見える真っ白な和服に身を包んだ者と出会う。
あれは恐らく、木霊である康二だ。


「あれ、ふっかさんやん。どしたん？」
「狐くんが持ってきてくれたんだけど、これの使い方分かんなくってさ」
「あー、これは……こうや！ここまできたら分かるやろ」
「いや分かんねぇ」
「嘘やん」


こいつ俺の世間知らず度合い舐めてんのか。
とは心の中で言いつつも、親身に教えてくれるものだから絆されてしまう。
まじで康二が子犬にしか見えない。


「ふっかさん聞いとる？」
「あ、ごめん」


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