・ ページ2
＿＿目黒
ふっかと呼んでくれと言った人は生前、医者をしていたらしい。死因は交通事故。
中々腕が良いと評価されていたらしく、その優しい笑顔から人当たりの良さも窺えた。
あぁ、良い人なんだな。それが第一印象。
それから話して気付いたのは、ふっかさんにあって俺にはないものがあるということだった。
それが、夢だった。
寝ている時に見る夢ではない。将来やりたいことや、未来に希望を見出すような夢である。
ふっかさんは自身の夢をふわっとしたものだと自虐をするように笑っていたが、それでも羨ましかった。
何も知らないからしたいことなんて無いし、将来に希望も光も何も見いだせないから。
「じゃあさ、俺と一緒に見つけようよ。」
「え…成仏は、」
「こんな浮かない顔した人放って成仏なんてできねーよ。
思念とかそういうのが残って、怨霊とかそういう怖いのになりそうだし。」
あー怖い怖い。と言う彼は実質既に幽霊のようなものなのだが、そんなことを言ってくれる人は初めてだった。
だから、嬉しくてその提案に頷いてしまった。
それから、眠った後に訪れるそこは独りぼっちではなくなった。
夢の中の病院に行ったらふっかさんが診察室に居て、そこでカウンセリングと言う名の思い出話をしてくれる。
その話に少しでも興味を持ってくれればそれでいいんだと言うふっかさんの言葉を信じて、俺は毎日カウンセリングを受けた。
俺の専属医はやたらと話が上手くて、何を聞いていても楽しかった。
それでも、興味を持つのにはどれも届かなかった。
「ねぇ、ふっかさん。
ふっかさんはなんで医者になろうと思ったの。」
「めちゃめちゃ在り来りだよ。俺のばぁちゃんのことを最期まで諦めなかったその姿が、めちゃめちゃかっこよくてさぁ。
ほんとは普通のサラリーマンにでもなって、何よりも尊い普通を謳歌しようと思ってたんだよ。
けど、大学決めるってなった時にさ。いつの間にか、医学部の文字探してたんだよ。
ばぁちゃんを診てくれたあの医者の背中が、いつになっても忘れられてなかったんだよね。
だから、医者になった。」
「…なんか、かっこいいね。」
「だろ？これでも結構モテたんだぞ？」
医者になろうと思えたこと。それだけでもかっこよかったけど、俺に何よりも響いたのは『何よりも尊い普通』というワードだった。
きっと何気ない発言。ふっかさんにとっては何ともない言葉。
だからこそ、彼が輝いて見えた。
·
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 329人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
蜜柑。(プロフ) - はるさん» 読んでくださりありがとうございます。続き書かせていただきます！！ (11月28日 0時) (
レス) id: 0dff0fdfaf (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - 貴方は今宵もプリンセス -読みました！mmabでこういうシチュエーションあったらなーっと思っていたのでワクワクとときめきが止まりませんでした笑もし続きを書いていただけたら嬉しいです。これからも物語楽しみにしています！ (11月27日 23時) (レス) @page25 id: 6c02acd669 (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑。(プロフ) - dtab担さん» 申し訳ありませんが、パスワードに関しては青鳥でのみの公開とさせていただいております。申し訳ありませんが、アカウントを作ってフォローをお願いします。 (2022年10月9日 21時) (レス) id: 0dff0fdfaf (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑。(プロフ) - 紅蘭さん» 承知しました。現在私生活が多忙で執筆活動が追いつかないため、恐らく4月以降になると思います。申し訳ありませんが、お待ちいただけると幸いです。 (2022年10月9日 21時) (レス) id: 0dff0fdfaf (このIDを非表示/違反報告)
dtab担 - 青い鳥をやってない場合はどうやってパスワードを聞けばよろしいでしょうか？ (2022年10月6日 19時) (レス) id: 2b0f5d8a84 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：蜜柑。 | 作成日時：2022年2月18日 20時
