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沈黙が、流れる。


何て答えたら良いのか、わからなくて。


「あれんと岸くんにも相談したの。
そしたら、やっぱり同じこと思ってた。
あー、遅かったんだなって……気づいた」


サラサラと


二人の髪をなびかせる心地よい風。


「Aのことだからさ。
今絶対俺に嫌われたいとか思ってるでしょ?」


「っー……!」


まるで心の中を読まれたように、言うものだから。


わかりやすく反応してしまった。


そんな様子を見て、怜央くんは「やっぱり」なんて大きな息を吐いた。


「残念ながらそれは出来ないんだよね?
……Aは俺にとって」


大きな手が、頭を撫でようとして──止まる。


もう、簡単に触れられない。


誤魔化すように、自分の頭を掻いた。





「誰よりも、幸せになってほしい人だから」




どこかで聞いたことのあるセリフ。


重なる。あの人と。


「……ありがと。好きになってくれて」


何度季節が巡っただろう。


いつも隣には、Aがいた。当たり前のように。


俺はもう、二度と誰かを愛せないんじゃないか。


そんな錯覚にまで陥る。でも今だけは許して。


大好き『だった』よ。何もかも。


俺は少しでも


Aを幸せに出来たかな?


「……ありがとう。好きって言ってくれて」


隣にいるだけで


どんな世界だって、輝いて見えた。


お礼を言うのは、私の方。


大好きでしょうがなかったよ。何もかも。


私は少しでも


怜央くんを幸せに出来ましたか?


「また、どこかで会おう?」


触れる細い手首。


いとも簡単に、ガーネットのブレスレットを外した。


その瞬間。


本当に終わることを実感して。


止まっていた涙が溢れ出す。


零すわけには行かない。我慢して。


「駅まで送るよ」


キミは最後まで


どこまでも罪な人だった。


ー通勤ラッシュの時間帯。


怜央くんに手を振り、私は改札を通る。


振り向かない。振り向いちゃいけない。


だって私を見送ってくれてること、知ってるから。


いつも、そうしてくれたから。


ボロボロ頬を滑る涙。


危うく転びそうになる階段。


隣のサラリーマンが、眉をしかめる。


いつかこの痛みも、消えるときが来るのだろうか。


懐かしいね、なんて笑える日が来るのだろうか。


それまでに、絶対幸せになる。なってみせる。


私は。


幸せにならなくちゃいけない。

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設定タグ:永瀬廉 , 長妻怜央   
作品ジャンル:恋愛
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ろいなな - 主人公がどっちと幸せになるのか、ドキドキハラハラしつつ、どこか切ない感情が湧いてきて、ラストの予想外の展開に驚き、読み終わる頃には感動の溜め息を溢してしまいました。とても面白かったです! (2019年7月12日 21時) (レス) id: 867fd5dec2 (このIDを非表示/違反報告)
ろいなな - 最初は廉くんの小説を読んでみたいという気持ちで読み始めたのですが、怜央くんも出ているのかと感激してしまい、一日中かけて読みきってしまいました…! (2019年7月12日 21時) (レス) id: 867fd5dec2 (このIDを非表示/違反報告)
#かのん(プロフ) - 受験が終わって、やっと解禁した「雪月花の思い出」。2日で読み終わってしまいました。はじめてれなさんの作品を拝見した時から、ずっとずっと大ファンです。本当に感動しました。この作品、大好きです! (2019年2月16日 14時) (携帯から) (レス) id: f71de401a4 (このIDを非表示/違反報告)
- 感動しすぎて、涙が止まりませんでした。こんなに感動して、心を動かされる作品を作れるれなさんを本当に尊敬します。ありがとう。 (2019年1月14日 2時) (レス) id: 4c9c32bd1b (このIDを非表示/違反報告)
なつき - とても感動しました。いつも、ありがとうございます。 (2019年1月13日 20時) (レス) id: c54ace13cd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:れなさん | 作者ホームページ:れなちゃん(@pinky_t17)さんをチェックしよう https://twitter.com/pinky_t17?s=09...  
作成日時:2017年2月10日 17時

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