はな吹雪

同期のあの子　３ ページ19

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「ひろくーん」



『はーい』







返事をして声の方を振り返ったら、自分と同じくらいの塊が近くにいた。


ぴったりとひっつくもんだから、ぽんぽんと背中を叩きながら支えてやる。







『おはよう、A』







あれから本当に連絡先を教えてもらって、駅前にも行った。


確かにAや友達の言ってた女の子はいたけど、別にAと変わらないと思った。


それからも交流が続いて、立花さんと呼ばれ慣れてない彼女をAと呼ぶことになった。


山本というありふれた苗字は被るとのことで泰寛と呼ばれるようになった。







『(懐かしいなあ)』







俺が大学に行って、Aがジャイアンツに入って。


会うことは高校の頃より増えたかもしれない。オフに遊びに行ったり、ご飯食べたり。


Aの弱音を聞くこともあったし、俺もAに励ましてもらうことがあった。







『(いつからひろくん、なんて呼ぶようになったんだっけ)』







ドラフトが掛かって、プロ野球選手になって。


あ、同じチームだ、なんて咄嗟に思うくらいには仲が良かったと思う。


俺がジャイアンツに来てからかな、ひろくんって呼ばれるようになったの。







『(ま、いっか)』







何故かどれだけ動いても汗臭くならないAは、今日も花の匂いがした。


試合前に何故かこうやって抱き付いてくるのは癖なのかな。


なるべく一緒に1軍にいれるように頑張るから、他の人にしないでね。







「へへ、いつもありがとう」



『こちらこそ。もう大丈夫？』



「だいじょぶー、今日も頑張るよー」







間延びした返事をしたAが、ぺたぺた足音を立ててロッカーに戻っていく。


やっぱり、ちゃんとした女の子だ。





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高井くんとはまた違った、特別な距離感。
このまま山本選手落ちにしようか迷い中…


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