Dear my sister. (ページ14)

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渡辺side

涼太に代わり佐久間達の前に移動した。
正直まじで自信が無い。
俺も妹がいるけどこんなに小さかった頃の事なんてすっかり忘れてしまった。
俺、妹と何して遊んでたっけ？

渡「えっと、初めまして」

ひとまず目の前のAちゃんにそう言って一礼。
Aちゃんを後ろから抱えている佐久間はふっ、と吹き出していたが無視だ無視。
なんてたって俺は真剣だから。

渡「渡辺翔太です。よろしくお願いします」

『佐久間 Aです』

恐る恐ると言った感じで名前を教えてくれたAちゃん。
Aちゃんは後ろの佐久間がAちゃんのお腹に回していた手を取り、体育座りしている自分の膝の上に持ってきていて表情はあまり見えない状況だ。
外野からはお見合いか、という呟きが聞こえたがこれも無視だ無視。

渡「えっと、どうしようかな、あ。好きな動物はなんですか？」

『……』

佐「A、何の動物好きだっけ？」

やばい、無言。
これは痛恨のタイムロス。
兄の佐久間が子どもの頃に動物図鑑読み漁ってたって前に言ってたから妹のAちゃんもって思ったけど外した？

渡「俺はイカが好きなんだよね。佐久間は？」

佐「俺？おーれはね、動物ならなんでも好きだよ」

渡「あー、苦手なもの無さそうだもんね。Aちゃん位の年の子だと何好きなんだろ、猫とか犬とか？」

『犬好き』

渡「犬好き？犬好き！？ねえ、犬好きなんだって！」

答えが返ってきた事が嬉しくてつい後ろに控えるメンバーにも報告する。

渡「犬か。犬可愛いよね、犬」

『お家で飼ってる』

渡「え、そうなの？なんて名前？」

『ムーン』

渡「ムーン！可愛いね。お世話するの？」

『あのね、一緒にね、お散歩行くの』

渡「偉いねぇ」

佐「A、A、1年前にお兄ちゃんが歌舞伎やってるの観に来てくれたじゃん。その時に翔太、犬の役やってたんだよ。覚えてない？」

佐久間のその台詞にAちゃんは大きな瞳をもっと大きくして、心なしかキラキラといっそう輝きを増す。
さっきまで佐久間の手に隠れていたのが嘘のように真っ直ぐに俺を見つめてくる。

『……ナべ郎？』