Dear my sister. (ページ16)

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深澤side

佐久間の妹で、5歳で、来年小学校で、人見知りで、犬が好き。
今の所 Aちゃんに対して分かっている事はこれくらい。
どうやって開拓していこっかなぁ、そう考えながら佐久間達と対面になるように座る。

ひらり、目の前で小さな手のひらが揺れる。
Aちゃんの視線の先を追えば翔太が手を振り返していた。

おーおー仲良くなったなあ。
翔太も最初はあんなにビビってたくせに。
まあ仲良き事は美しきかな、ってね。

Aちゃんの後ろで佐久間は優しそうに微笑んでいた。
いつもは人一倍、、いや二倍三倍は騒がしい奴なのにこうしているとただの妹思いの兄貴って感じ。

深「Aちゃん、深澤辰哉です。よろしくね。
滝沢歌舞伎観に来てくれたんだね」

そう声をかけるとぱっちりとした大きな目に俺が映った。

『うん、ママとね、一緒に行った』

深「そうなんだ、お兄ちゃんもね出てたんだけど分かるかな？」

『…わかんない』

深「ま、ま、ま、そーよね。女形だったしね。俺はねお丸さんやってたんだよ」

『お丸さん』

俺の言葉を繰り返すAちゃん。
大きな瞳は佐久間そっくりのぱっちり二重。
その瞳がじ、っと俺を見つめる。

『お丸ちゃんは女の子だよ』

きょとん、
何を言ってるの？という純粋な視線が俺に刺さる。
Aちゃんの後ろで佐久間は空を仰いで笑う。

深「女の子の役を男の子がやってもいいよって舞台だったんだ。だから俺がお丸ちゃんだったの」

『お丸ちゃん男の子だったの？』

深「いやお丸ちゃんって役は女の子なんだけど、あ、これ難しいな」

『お兄ちゃんがお丸ちゃん』

深「そうそうそう、大正解。」

ここまで話してハッとした。
これじゃ翔太の二の舞だ。
きちんとお丸ちゃんではなく深澤辰哉として記憶してもらわなきゃ。

ひとまず一旦滝沢歌舞伎の話題から離れようと、一度ゆっくりと瞬きをした。