「恋に落ちる実験をしよう」

実験4 ページ4

『第4問、あなたにとって「完璧な日」とはどんな日ですか？』


完璧な日、と降谷が呟いた。結構難しいな、これ。

わたしにとって完璧な日。完璧？だめだ、考えても分からない。

と、降谷がじっとわたしを見ていることに気づく。はやくしろとでも言いたげに。


『思いついたんなら先いいよ？』

「ダメだ。条件を変えたら正しい結果が得られない」

『……もうちょい待って』


そうだ、降谷はこういう奴だ。ちょっとむすっとしながらもう一度脳を動かす。

「完璧な日」ってつまり特別な日だろうか。……たぶん違う。



『大事な人と一緒にいられる日、かなぁ……』



じっくり考えて出した答えがこれだった。取り繕ったりしなくてもいい日がいちばん幸せなんだと思う、たぶん。


「誰だ」

『え？』

「その大事な人って、誰だ」


降谷は怖い目をしていた。どうした？情緒不安定か？


『誰ってワケじゃないけど、家族とか友達とか。もちろん、降谷も大事だよ』

「……うるさい」


言うと、降谷はそっぽを向いてしまった。完全に情緒不安定だろ。もうニューヨークタイムズ見るのやめた方がいい。


「僕にとっての完璧な日は、平和だ。なにも起きないで、ゆっくりと眠れるくらい平和な日。目がさめると、君が笑っていてくれるような」

『わたしも出てくるんだ』


そういえば降谷の睡眠時間はとても短いらしい。そのくせ居眠りもしない。まさに、模範的。


『いつか訪れるといいね。ゆっくり眠れる日』

「……あぁ、そうだな」


少しだけ悲しそうに、降谷は笑った。







「5問目。最後に1人で歌を歌ったのはいつか。また、誰かに対して歌ったのはいつか。

1人で、はそうそうないな…うん、ないかもしれない。誰かに対してってのは合唱も入ると思うか？」

『入れていいんじゃない？』

「なら今年の始業式の校歌」

『……あんた鼻歌とか歌わないの？』

「しない」

『こわ。わたしはいつかなぁ…1人は毎日お風呂で歌ってるし、誰かに対してはカラオケかなぁ。2週間くらい前に行った』


また降谷に見つめられる。なんだ、言いたいことがあるならはっきり言え。


『……なに、カラオケ行きたいの？』

「いや、たぶん流行りの歌は知らない」

『じゃあ何？』

「……渡辺と出かけたことないな、って」




なんて、小さな声で目をそらしながら降谷が言うから。

ちょっとだけ苦しくて、わたしも視線を落とした。

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