「恋に落ちる実験をしよう」

実験18 ページ18

『わたしはなんだろうなぁ……今までは向けられてばかりだったから、誰かに与えられるようになりたい。役割は……うーん、分かんないや』

「それが答えか？」

『ちょっとずるいけどこれでいい？』

「質問を飛ばす、に該当するかもしれない」


そう言って降谷は考え込んでしまった。さすがに申し訳ないのでもう一度答えを探す。

「役割」っていう言い回しが難しい。概念なのにものに例えなきゃいけないなんて大変だ。


『目標！』

「ん？」

『わたしが生きる目標にしたい。ちゃんと、愛を理解すること。

……役割とは、ちょっと違うかもしれないけど』


「いいんじゃないか。渡辺らしくて」



降谷は前触れもなく手を伸ばす。

突然のことに固まるわたしをよそに、降谷は優しく頭に触れた。



『ちょっ、降谷！？』

「っ！？」


降谷は目を見開いて、効果音がつきそうなくらい勢いよく手を引いた。とても驚いた様子で左手を見つめている。


降谷に頭を撫でられた。


いや、髪にゴミが付いてただけかもしれない。過度に反応したらダメだ。



「ごめん、その、……無意識だったみたいで、」

『や、びっくりしただけだし、気にしないで』




やけに優しい目をしていた気がするなぁ、とぼんやりと思う。

細められた青い瞳に見つめられるのがいやにくすぐったくて、わたしはすぐに目を逸らしてしまったのだけど。





.







『とりあえず次いこっか。22問目、相手の長所を5つあげてください。お互い順番に、ひとつずつ述べてください……？』

「またすごいのが来たな」

『なんかこそばゆいね。じゃあまず、顔が良い！』

「それは長所なのか？……髪が綺麗」

『えっ嬉しい、ありがと』


最近気づいたんだけど、女の子が髪切ったのを主張するのは、髪のことを気にかけてもらえるのが嬉しいからだ。……女の子全員とは限らないか。まあ、少なくともわたしは。

普段は髪を結ばないけどこないだ結んでみたら、めっちゃ新鮮で好きって友達に言われた。なんかよくわかんないけどすごい嬉しくて、わたしも積極的に褒めたいな、と思った。


それをこの男は大して狙いもせずやってのけたんだろう。モテる男は違うなぁ……。

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