聞こえた言葉 ページ20
フウカside
目が覚めても、手首の焼き付く痛みと背中を突き刺す痛みは取れてなかった。
むしろ、さっきより酷く悪化してるみたいで。
…そんな状態だからここが何処だかも分かんないし、逃げようという気分にさえもならなかった。
横になったまま頭を動かすことも面倒で、目を閉じたままボーっとする。
(皆、どうしてるかなぁ…)
その時。
(っ！)
優しく、少し冷たい何かがあたしの頬にそっと触れてきた。
それはまるで腫物を扱うかのようにそっと包んで———
…それが手と分かるまでには大分時間がかかった。
でも声を出すことも面倒になっていたあたしは、一度チラリと上を見た後でまた視線をずらす。
(何で、だろ…何にもしたくない…)
ホントは『助けて』って言いたいし、出来ることならこの場から全力疾走してでも逃げたい。
だけど、体が言う事を聞かないんだ。
本能に抗うかのようにどんどんやる気が無くなっていって…いつものあたしらしくない行動になってしまう。
「ん〜…ちょっと効きすぎたかもしれないなぁ。」
ふっと笑う声と共に、あたしの視界を白い何かが通る。
追えば、気を失う寸前に見た白い蝶々がたくさん舞っていて。
その中でも一際、眩しく輝いていた大きな蝶々はゆっくり羽を羽ばたかせて…ある人の指先に止まった。
(誰…？)
曇りそうな視界を精一杯に広げて、ジッと見つめる。
…その時、ふわりと香ったのは甘い花の匂い。
何で花の匂いって分かったのは知らないけど…
それを吸い込んだ瞬間、頭痛と共に目眩と猛烈な睡魔が誘き寄せてきた。
曇った視界が更に歪んで輪郭がぼんやりしていく。
「…。…——ね。」
彼女の口元は何か喋ってるみたいで、少し動いてるけど…
既に五感が奪われかけた今、残ってるのは聴力だけ。
指先の感覚も、何とか持ちこたえていたはずの視力も…今は働かなくなっていた。
僅かに零れる音を聞き逃さないように、全神経を尖らせて耳を澄ました。
「『英雄』シシィ…。」
(…『英雄』、シシィ…？)
その言葉だけをしっかり聞いたあたしは。
ぷつんと糸が切れたかのように、そのまま意識を手放した。
どうなっちゃうのかな、あたし。
ここで死んじゃうのかな。
やだよ。
だって、あたしまだ、いろんなこと、したいの、に…。
*
*
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カメレオン(プロフ) - 美姫さん» 初めまして、元・爽のカメレオンです。一から呼んでいただいた上、暖かいコメントありがとうございます。実に恐縮です、作者自身あまり思うように書けてない時期もありましたので…… ご期待に添えられるよう更新も進められるように精一杯尽くさせて頂きます…！ (2021年11月9日 23時) (
レス) id: 59d3ccbf2f (このIDを非表示/違反報告)
美姫(プロフ) - はじめまして。幼馴染の約束シリーズから一気に拝見いたしました。構成やキャラ達の心情描写が細かくてすっごく好きです。更新してくださるのを待っております。 (2021年11月9日 22時) (レス) @page21 id: bf741dd95e (このIDを非表示/違反報告)
爽(プロフ) - ♪稀小椎♪（mej）さん» まーちゃぁん泣大好きよっ久しぶりっっ！！ありがと全力で頑張るね！ (2020年9月21日 15時) (レス) id: b0b3a08d76 (このIDを非表示/違反報告)
♪稀小椎♪（mej）(プロフ) - お久しぶり？です。続き楽しみにしてるで〜 (2020年9月21日 15時) (レス) id: 4cf15cbb89 (このIDを非表示/違反報告)
ケイ(プロフ) - アミさん» あーりがとーっ！あーちんの想い、受け取ったっｷﾗﾘ (2020年8月13日 15時) (レス) id: 82f3ba1a1a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：爽 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/snow17111/
作成日時：2020年5月3日 18時
