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続き ・アリスside・ ページ36

アリスバージョン

 仲間の皆に悲しみと絶望の渦が巻き起こった時。


 「アリス…」


 ふと、小さく、私の耳に届いた声。


 間違いない、この声は。


 流していた涙を拭って顔を上げると、カヤが腕を持ち上げていた。


 私を探してる?


 「…っカヤ?どうしたの?私はここにいるよ。」


 無理矢理笑顔を作って駆け寄ると、彼女の手をそっと握った。


 彼女はもう目を閉じていて、声だけを精一杯に上げていた。


 「いいか……お前にもう一度…ホントにこれが、最後だ。」

 「嫌、最後なんて言わないで…」


 か細くそう言った後で、ギュッと下唇を噛んだ。


 笑わなきゃ。


 嫌だけど、凄く嫌だけど。


 もう最後かもしれないんだから。



 笑え。アリス。



 閉じていた目を開くと、涙で何個にも割れた視界が広がる。


 それでも、笑顔を作った。


 「変じゃ、ない…っ?」


 カヤは力なく笑った。


 「不細、工だけどな。変じゃねぇよ。」


 どっちなのさ。


 でも、こんな冗談を言い合うのも…これで終わり。


 次はない。


 カヤの長くて白くて細い指が、私の頬に触れて包んだ。


 冷たい手だけど、ほのかに温かみを感じた。


 上から私が包むと、ふわりと微笑んだカヤは言った。



 「今日、から……お前がこの隊を率いて、くれ。」


 「「「…!?」」」



 驚きと動揺が駆け巡り、兄さんの瞳も大きくなる。


 「ホントにコイツに任せるのか…?」


 「二度は言わない。…次はアリス、だって…出会った時から決めてんだ。」


 今度こそ止まらなかった。


 無理矢理作ろうにも口角が上がらない。


 カヤの前じゃ笑ってなきゃいけないのに。


 「だから、アリスが…番長になり、たいって…言ってくれて、嬉しかった…」


 そこまで呟いてはぁと息を吐き出す。


 「あたしのお役目は…っここまでだな。」


 そう言った彼女が最後、瞳を開いた。


 「最後だし、お前らの……笑った顔、を焼き付けとこうか…」


 そう言った彼女に誰も反論する人はいなかった。


 皆で顔を寄せ合い、カヤの目の前で思い切り笑った。






 「「「「番長、今までご苦労様でした。」」」」






 「私に任せてね…っきっといい仲間にするから…!」



 カヤはこの上なく嬉しそうに微笑んで。



 もう、何も思い残すことはなさそうに笑みを残したまま




 そっと、息を引き取った。

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ケイ(プロフ) - ごく普通の人さん» ありがとうございます!嬉しいです。その言葉を励みにこれからも頑張ります(`・ω・´)ゞ!!) (2020年8月11日 18時) (レス) id: b0b3a08d76 (このIDを非表示/違反報告)
ごく普通の人 - うっわぁ。さすがケイ様。面白〜い! (2020年8月11日 18時) (レス) id: 25d3ac3089 (このIDを非表示/違反報告)
ケイ(プロフ) - 双葉あめりさん» ありがと全力で頑張りまする! (2020年8月2日 10時) (レス) id: 82f3ba1a1a (このIDを非表示/違反報告)
双葉あめり(プロフ) - ケイさん» どういたしましてっ!!知ってて良かった笑作品頑張れー!! (2020年7月18日 17時) (レス) id: 045daae5eb (このIDを非表示/違反報告)
ケイ(プロフ) - 双葉あめりさん» ぅぅうううう泣ありがと莉央、今物凄く救われた気分になったよぉおお号泣 (2020年7月18日 16時) (レス) id: 82f3ba1a1a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ケイ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/snow17111/  
作成日時:2020年4月16日 18時

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