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続き ・アリスside・ ページ35

アリスバージョン

 と。

 「番長に、会わせろ。」


 涙を拭いて顔を上げると、仲間の皆が歯を食いしばって私を見ていた。

 「最期なのに番長に会わねぇで帰れってそんなの出来るわけねぇ。」

 皆の額に怒りと悲しみが浮かんで、また視界が涙で滲んだ。

 そんな中、兄さん一人が私の肩を抱いて俯いたまま声を出した。

 「カヤは、どこにいる?」

 その後で顔を上げた兄さんの堪えた表情にぐっと拳を作る。


 ―――皆を、会わせよう。


 私は決意して、皆をボロボロになった店の中に案内した。








 カヤのところに着いた時、仲間全員の足がピタリと止まった。

 泣きそうに顔を歪めた人。怒りで握った拳から血が出ている人。悔しそうに俯く人。

 仲間の表情は様々だった。

 私は一人、カヤの元に歩み寄ってもう一度肩を叩いた。

 「っ番長…!…自慢の仲間がどうしても会いたいって、言ってるよ。」

 そう声を掛けて力いっぱいに抱きしめた。

 と。



 「……さい、ごは…アリスで良かった、のに…」



 小さく弱々しい声が聞こえて、慌てて体を離すとカヤが薄っすら瞳を開いて微笑んでいて。

 死ぬ最後には見えない程に綺麗だった。


 「番長…っ!」

 「何があったんすかっ!!」

 「しっかりして下さいっ」


 仲間の皆が騒ぎ立ててカヤを見つめる。


 そんな中、兄さんが声を上げた。



 「カ、ヤ。」



 その時のカヤの瞳が忘れられない。


 大きくなって、何度も瞬きをして。

 かと思ったら大量の涙が溢れ出した。



 「ジン…」



 兄さんの名前を呼んでる。

 カヤが涙を見せたのは初めてだった。

 私も初めて見た。

 察した。



 ―――カヤにとって…兄さんは大事な存在だったんだ。



 私は顔を上げて、溢れる涙を拭いながら口を開いた。


 「兄さん。カヤの、傍にいてあげて…っ」


 そう言った時、兄さんが傍に寄ってきてガクッと膝から崩れ落ちた。

 カヤが震える手で兄さんの方に腕を伸ばす。

 兄さんは迷わずその手を取って引き寄せると、この上なく優しく彼女を抱きしめた。


 「…はぁあ。やっ…と安心、できた。」


 カヤの一言が耳をつき、嫌でも涙が出てくる。

 兄さんは抱きしめたまま、声を振り絞った。


 「大丈夫だから。俺らがちゃんと仇取ってやるから…。」


 そう言った時、カヤが泣きながら笑顔を作った。



 「おうよ。任せた、かんな。」

 眩しい笑顔だった。

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ケイ(プロフ) - ごく普通の人さん» ありがとうございます!嬉しいです。その言葉を励みにこれからも頑張ります(`・ω・´)ゞ!!) (2020年8月11日 18時) (レス) id: b0b3a08d76 (このIDを非表示/違反報告)
ごく普通の人 - うっわぁ。さすがケイ様。面白〜い! (2020年8月11日 18時) (レス) id: 25d3ac3089 (このIDを非表示/違反報告)
ケイ(プロフ) - 双葉あめりさん» ありがと全力で頑張りまする! (2020年8月2日 10時) (レス) id: 82f3ba1a1a (このIDを非表示/違反報告)
双葉あめり(プロフ) - ケイさん» どういたしましてっ!!知ってて良かった笑作品頑張れー!! (2020年7月18日 17時) (レス) id: 045daae5eb (このIDを非表示/違反報告)
ケイ(プロフ) - 双葉あめりさん» ぅぅうううう泣ありがと莉央、今物凄く救われた気分になったよぉおお号泣 (2020年7月18日 16時) (レス) id: 82f3ba1a1a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ケイ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/snow17111/  
作成日時:2020年4月16日 18時

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