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続き ・アリスside・ ページ32

アリスバージョン

 その時、兄さんが私の頭を撫でた。


 「…お前はここで待ってろ。俺たちが絶対取り返してくるから。」


 『待ってろ』?

 無理だった。出来るはずがなかった。

 誰より、何より、大事な人だったんだカヤは。


 母さんみたいな、優しさが無くなったかもしれないのに。


 「っ嫌っ!私も連れてって!カヤの…カヤのところに行くっ!」

 ほとんど泣き叫びながら縋った。


 ―――皆分かっていたのかもしれない。


 あの時の私でさえ、なんとなく感じていた。



 もう、カヤは手遅れなのでは。



 でもそれを認めたくない人しか、いないんだ。

 だって『番長』なんだから。


 いつだって強い、番長なんだから。



 「私も、行かせて、下さい…っ」


 そう言った時、兄さんの大きな手が頭の上に乗った。









 家を出て。


 私たちは途方もない怒りで歩いていた。


 許せない。許せるはずがない。


 彼らが強い事は百も承知だった。


 だけど、どこかで確信していた。


 私たちは強い。何処のどんなものよりも。彼らより、何倍も強い。


 憎しみを溢れさせながら、私たちは歩みを進めた。




 街は酷い状況だった。


 彼らが散らかしていったような後ばかり、無惨に残っていた。


 綺麗だった街は変わり果て…荒れ狂った残酷な面影しか残っていなかった。




 私が視線をずっと動かしていた時。




 ―――ある所で目線を止めた。


 一人、綺麗な女性が椅子にもたれて俯いたきり、動いていない。


 白く透き通った羽はキラキラと眩いオーラを放っているものの、少しも反応していない。



 涙が、止まらなかった。



 皆が歩いて捜している時、私は一言も声を出さずに足を止めて、店に入っていった。



 ぽたぽたと地面に涙が染みを作る。


 椅子に寄りかかった彼女の前で足を止めて、震える口を開いた。



 「カヤー…?カヤ、何で寝てるの?


 起きてよ〜、皆心配したんだよ?



 その赤いのは何?服が真っ赤じゃん。


 どうして羽がそんなにボロボロなの?超綺麗だったでしょ?」




 力の抜けそうな腕を伸ばして、カヤの手を取った時。


 力なく、彼女の体が私に寄りかかってきた。



 呼んでも返事がない。少しも動かない。


 体中、血だらけ。羽は傷ついている。


 間違いなく、彼女は苦しみに耐え抜いたのだと、自覚した。



 「あ゛ぁあああああっ!」



 私は、泣き叫んだ。

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ケイ(プロフ) - ごく普通の人さん» ありがとうございます!嬉しいです。その言葉を励みにこれからも頑張ります(`・ω・´)ゞ!!) (2020年8月11日 18時) (レス) id: b0b3a08d76 (このIDを非表示/違反報告)
ごく普通の人 - うっわぁ。さすがケイ様。面白〜い! (2020年8月11日 18時) (レス) id: 25d3ac3089 (このIDを非表示/違反報告)
ケイ(プロフ) - 双葉あめりさん» ありがと全力で頑張りまする! (2020年8月2日 10時) (レス) id: 82f3ba1a1a (このIDを非表示/違反報告)
双葉あめり(プロフ) - ケイさん» どういたしましてっ!!知ってて良かった笑作品頑張れー!! (2020年7月18日 17時) (レス) id: 045daae5eb (このIDを非表示/違反報告)
ケイ(プロフ) - 双葉あめりさん» ぅぅうううう泣ありがと莉央、今物凄く救われた気分になったよぉおお号泣 (2020年7月18日 16時) (レス) id: 82f3ba1a1a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ケイ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/snow17111/  
作成日時:2020年4月16日 18時

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