続き ・チトセside・『コチョウラン』 ページ13
チトセバージョン
そんな時。
「チトセ…様?」
どんな声でもこの人の声は頭から離れたことのない声。
「セシルさん。」
チョコレート色の瞳を大きくさせて、駆け足気味に近寄ってくるセシルさんは俺の手を取ると眉を下げて笑った。
何でそんな、苦しそうな顔するんですか…。
「…チトセ様しか、いらっしゃいませんよ…姫さまのお隣は。」
「っ……俺じゃないです…。」
否定する時、胸が苦しくなるのは何故なのだろう。
ナイフで傷口を抉られるより、冷たい水の中に体を沈めるより、ずっと辛く苦しい。
「…チトセ様は何か、勘違いしておられる。」
「え―――」
セシルさんの言葉に俺はハッと顔を上げた。
差し出してきたセシルさんの手から一枚の紙を受け取る。
見た瞬間、心が震えた。
一枚の紙。それは写真だった。
「姫さま、戴冠式始まる前までずっとそれ…握ってたらしいですよ。…別の侍女が申しておりました。」
写真に写ってたのは…俺とフウカの幼いころ。
そしてその写真の裏には…
『あの頃に戻りたい』
震えた字で書かれた一言。
その写真を強く握った。
「……んで下さい。」
「え?」
小さく呟いた言葉にセシルさんが聞き返してくる。
俺はほとんど消えかけの声で言った。
「呼んでいただけませんか…っ?」
今すぐに会いたかった。
もう、耐えられる状況ではなかった。
セシルさんは俺をしばらく見続けた後…
「待っててください。」
そう零してドアを開けて中に入っていった。
写真を見つめて、俺は目を固く閉じた。
君はまだ俺の事、忘れないでいてくれますか。
君と離れて幾日、幾月会ってないだろうか。
君はどういう反応をするだろうか。
俺はどういう反応をするんだろうか。
どんな形でもいい、どんなに短くていい。
―――とにかく、君に逢いたい。
すると突然、
ビリビリっ
(!?)
何かを横に裂く音。
驚いて俺は思わず写真を隠した。
その時。
「っ」
俺は固まった。
目の前には…一番今、逢いたかった人。
あぁ。
やっと。
―――いろんな意味でやっと君に逢えた。
胡蝶蘭。
読み方はコチョウランと読む。
花言葉は
『純粋な愛』。
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ケイ(プロフ) - ごく普通の人さん» ありがとうございます!嬉しいです。その言葉を励みにこれからも頑張ります(`・ω・´)ゞ!!) (2020年8月11日 18時) (レス) id: b0b3a08d76 (このIDを非表示/違反報告)
ごく普通の人 - うっわぁ。さすがケイ様。面白〜い! (2020年8月11日 18時) (レス) id: 25d3ac3089 (このIDを非表示/違反報告)
ケイ(プロフ) - 双葉あめりさん» ありがと全力で頑張りまする! (2020年8月2日 10時) (レス) id: 82f3ba1a1a (このIDを非表示/違反報告)
双葉あめり(プロフ) - ケイさん» どういたしましてっ!!知ってて良かった笑作品頑張れー!! (2020年7月18日 17時) (レス) id: 045daae5eb (このIDを非表示/違反報告)
ケイ(プロフ) - 双葉あめりさん» ぅぅうううう泣ありがと莉央、今物凄く救われた気分になったよぉおお号泣 (2020年7月18日 16時) (レス) id: 82f3ba1a1a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ケイ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/snow17111/
作成日時:2020年4月16日 18時