らくだい魔女と幼なじみの約束 × 一人一人の隣 (ページ15)

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●『ジョーカー』ページ15

チトセside

ユ「…これからどうするか、だよな。」

　ユウの言葉にその場に動揺が走り、背筋が自然と伸びた。

カ「そうよねぇ…。」

　言いながら心底辛そうに顔を歪めたカリンは、そっと顔を上げてフウカを見つめる。

　ライトグリーンの瞳が寂し気に揺れた。

　原因不明で、何が起きているのか分からない。

　そんな状況の中で俺たちに出来ることなんてあるのだろうか。

　マイナス思考に考え始めて、気分も絶好調に落ち込んでいた時。

　ガラガラっ

　「あっれぇ先客？」

　そう言って保健室に入ってきたそいつは、俺を視界に入れて「あーっ」と叫んだ。

　「ちー君！」

ア「カイ君！静かにっ！」

　この世でもあの世でも、俺を『ちー君』と呼ぶ男は一人しかいない。

　…カイだ。

か「病んじゃって保健室に来るぐらい、フウカの事心配になったの？可愛いなぁちー君は……」

　そうケラケラ笑ったカイの視線が、俺の後ろを見つめた途端固まる。

　視線の先は、グッスリ寝ているフウカ。

　彼女が保健室に来ることは滅多になかったから驚いたんだろう。

　…そして、彼の笑顔が固まったのは何といっても…

ル「…お前、次笑ったら容赦なくその口へし曲げるからな。」

　ルイの下から睨む圧。

　一瞬笑顔が固まったカイだけど、

か「…笑い事じゃなさそうだね。」

　そう言って不敵にも笑った彼の赤い瞳が、ほんの僅かにギラッと光った気がした。

　とりあえず、カリンが状況を事細かに詳しくカイに説明する。

　カイは何処から取り出したのか、トランプを繰りながら相槌を繰り返した。

カ「…倒れた理由が、よく分からなくて…。」

　そう言ったカリンに、ニコリと笑い返して視線をフウカに移した。

か「なぁるほどねぇ…しっかしこれまた『突然』倒れたって言うのが疑問だなぁ。」

シ「…もっと危機感持てよ。」

　自分の髪を触りながら、あくびをするカイにシュンがため息を吐く。

　でも次の瞬間、真剣な顔をした彼は椅子の背もたれに思い切り縋って口を開く。

か「ルイさんは何か感じたんでしょー？」

ル「…耳鳴りだよ。二度もな。」

　そう言ったルイに、カイの口角がくいっと上がった。

か「…もしかして、この学校内に『ジョーカー』がいたりして♪」

　言いながら繰っていたトランプの内の一枚を抜き取る。

　…彼の二つの指に挟まれていたのは…

　犯人を匂わせるように怪しく口角を上げた絵が描かれている『ジョーカー』だった。