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▽
キミは静かに泣いていた。
自分の生について。
死という終末において。
キミの小さな体が抱えるものは他者には計り知れない程とても大きくて、重たいものだった。
病院から飛び出していったキミの姿を見て、僕はなんだかいてもたってもいられなかったんだ。
ポケットに無造作に入れた処方箋がカサ、と音をたてる。
……薬、もらい忘れてたな。
本来の目的を忘れて、見ず知らずのキミについてきてしまうなんて。
病院を抜け出してまで嫌だったこと。
きっと耳を塞ぎたくなるようなことでも告げられたのだろう。
『野坂くん、そろそろ手術しないと』
『いえ、もう少しだけ……』
『手術のできる限界は、もって3ヶ月だよ』
例えば、余命宣告だとか。
「私、すぐに治療しないと死んじゃうんだって」
……やっぱり。
木陰に隠れて、日陰の下。
大きな瞳をいっぱいに濡らして、ぽつりと小さく呟くキミは、
なんだか僕の代わりに悲しい、悔しい、苦しいと、
泣いてくれているようだった。
「ごめん、こんな重いこと突然言って」
へらっと笑いながらも制服の袖で乱暴に涙を拭う。
袖元の紺色が涙で色濃くなっていく。
そんなキミの制服は雷門中学のものだ。
「使って」
「…ん。ありがとう」
僕は堪らずハンカチを差し出すと、キミは拒むことなくその布を受け取った。
「僕にもね、時間がないんだ」
自身の手を空にかざした。
ーーこの手で、世界を変えるんだ。
木漏れ日が指と指の間を抜けて、直に瞳を刺激する。
眩しいと思った。
脳腫瘍と宣告されたあの日。
限られた時間がはっきり数字となって提示されたあの日。
そうか、治療しないと僕という存在はこの世から…
その間に僕が世界に残せられること。
僕という存在が残せられること。
何だろうか。
悲しいとか悔しいとか苦しいとか。
そんな負の感情はなかった。
それより、
のうのうとしていられないといった焦燥感が僕にはあった。
僕はハンカチの入っていたポケットから小さな筒を取り出すと、
カラカラと音を立てるそれから、1粒手に取って彼女の前に差し出した。
「ねえ」
そんな僕の声に、ハンカチに顔を埋めていた君は顔を上げる。
「これ、何に見える？」
「…チョコ、マーブル」
…じゃなくて。
「色」
「ああ…」
意味が伝わったのか
ふふ、と真っ赤な目を柔らかく細めて笑うキミはひとしきり笑ったあと「ピンク」と言った。
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櫻田海桜 - また、更新再開してほしいです。 (2023年4月10日 14時) (
レス) @page19 id: 00142467d6 (このIDを非表示/違反報告)
風神ノ舞(プロフ) - お久しぶりです。って言っても覚えてなくて当然ですが、恋ふぶきで神童君をリクした元風丸渚です。リク大丈夫でしょうか？天馬君や竹見君の後で構いませんが、雪村君お願いできますでしょうか？ (2019年5月1日 17時) (レス) id: 02f1e78801 (このIDを非表示/違反報告)
みんと(プロフ) - 名前変更したのですが、すいです。お返事ありがとうございます！メインキャラでは無いのですが、竹見幸助くんなどは大丈夫でしょうか？難しいようでしたら断っていただいても構いません...！ (2019年5月1日 9時) (レス) id: 2701b73a88 (このIDを非表示/違反報告)
彼方(プロフ) - すいさん» いつも読んで頂きありがとうございます！！はい！リクエスト承っておりますよーっ！ (2019年5月1日 7時) (レス) id: 40379c818e (このIDを非表示/違反報告)
すい(プロフ) - はじめまして、彼方さんの小説いつも楽しみにしております。突然ですみませんが、リクエストなどは大丈夫でしょうか？ (2019年5月1日 5時) (レス) id: 2701b73a88 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：彼方 | 作成日時：2019年4月30日 14時
