11ｰ1 寒空の下、君と二人【風丸一郎太】 ページ24
今は何時だろう。
彼と歩くこの道も、何回2人で歩いたことだろう。
12月の夜は一段と凍える寒さだ。
その寒さに思わず身震いする。
昼も短く、まだ17時だというのにもう辺りは真っ暗だ。
確か明日、この地域には雪が積もるそう。
街灯の僅かな光と、月の照らす明かりに照らされながら、二つの細い影が今日も帰路につく。
車道側を歩く彼は、ずっと前から私が恋焦がれている、風丸一郎太さん。
1つ上の先輩で、頼り甲斐があって、何より優しい。
そんな先輩に、いつの間にか心惹かれていったんだ。
「先輩、今日も勉強見てくれてありがとうございましたっ」
「どういたしまして。今のAなら、次のテストは補講回避出来そうだな」
「そんな。自分の勉強もあるのに、わざわざ時間割いて私の分まで...」
「遠慮すんな。これからもどんどん俺を頼れ」
風丸さんの、綺麗なブルーの髪に隠れていない右目がそっと細められる。
何度見ても、先輩の笑顔は破壊力があるなあ。
私は何度その笑顔に安心して、惹かれて、心を打たれたことだろう。
好きだなと思った。
それと同時に、いつ彼と結ばれるのだろうと不安な気持ちに駆られた。
私は彼のことが大好きだ。
でも、この大きな想いを届ける程の勇気は持ち合わせてなくて、未だ心の奥底に閉じ込めたまま。
その扉はずっと開かれなくて、きっとこの関係はこのままなんだろうなと薄々思い始めていた。
でもやっぱり、
このままじゃ終わりたくない。
私は、その先に進みたい。
先輩と、二人で。
「先輩、相談があります」
「ん？」
「風丸さんは、好きな人っていますか？」
私の質問に風丸さんの瞳が一瞬、揺らめいた。
「…いるよ、大事にしたい奴が」
そんなの、私じゃないことは分かっている。
私だったらいいなだなんて夢を見て、自惚れたりなんてしない。
けれど、大好きな彼から聞かされる事実はあまりにも衝撃が大きすぎて、受け止めるのに精一杯だった。
「そう、なんですね」
歩くスピードを少し緩めて、私は言葉を続ける。
先輩もそれに合わせて足取りを緩めてくれた。
「私もね、泣きたくなるくらい好きな人がいるんです」
「…変わってるな、Aは」
「ん？何故ですか？」
「わざわざ泣かせるような男がAは好きなんだなって思って」
眉をひそめて困ったように、風丸さんは笑う。
先輩の、ことなんですけどね。
言い出しかけた言葉は、音を立てず、吐息となって寒空の空気へ溶けた。
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Setsuki.(プロフ) - 風丸の話の時に彗星ガールズの歌詞の一部があって感動しました！← (2019年3月28日 21時) (
レス) id: 77812d9344 (このIDを非表示/違反報告)
Zero - 彼方さん» 有難うございます(感涙)！ (2019年3月17日 10時) (レス) id: fec557507a (このIDを非表示/違反報告)
彼方(プロフ) - Zeroさん» リクエストありがとうございます！話数の関係でもしかしたら次の小説に移動しちゃいますがまたその都度更新させていただきますね(*´`) (2019年3月16日 19時) (レス) id: 35021d0064 (このIDを非表示/違反報告)
Zero - リクエストお願いします!!難しいと思いますけど､不動さんって書けますか?無理だったら全然良いです!! (2019年3月16日 15時) (レス) id: fec557507a (このIDを非表示/違反報告)
彼方(プロフ) - 妄想乙娘さん» 全て読んでいただけたんですね！(；＿；)とても嬉しいです！これからも頑張ります！ありがとうございます(〃´-`〃) (2019年3月12日 21時) (レス) id: 35021d0064 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：彼方 | 作成日時：2019年3月4日 8時
