06ｰ2 ページ13
「すみません。こんなことで手こずらせてしまって」
「いいんだよ。これからもどんどん看護師さんを頼ってね」
野坂くんは謝りながらも、無くしたと思っていた大事なサッカーボールが手元に戻ってきて心做しか嬉しそうに見える。
本当に、サッカーが大好きなんだなって思った。
野坂くんの頭に出来た脳腫瘍、初めて検査結果を見たときはその腫瘍の大きさに舌を抜かれたけれど、
野坂くん曰く、この腫瘍は野坂くんにとってのある大きな目的を果たすために、限りのある手術の可能な期間と照らし合わせて、敢えて摘出せずに残していたそう。
私だったらそんな、命を削るようなことは出来ない。
1歩踏み間違えれば命の危機だったのに、私と少ししか変わらない身体で、それなのに私よりも背負っているものは大きくて、改めて野坂くんはすごいなって感じる。
そして、野坂くんはこの検査入院を経て、今度アメリカへ本格的に治療を受けに行く。それも単身で。
「野坂くん、アメリカに行って治療終わったら、何がしたい？」
「うーん、そうですね.......」
一頻り考えた後、野坂くんは検査室へ向かう足を徐に止め、
「Aさんに、会いたい」
真っ直ぐ私の目を見て、確かにそう告げた。
「私、に？なんで？こんなどこにでもいるような看護師」
「AさんはAさんです。...僕、とても扱いにくい患者でしたよね」
"病棟1の問題児"
先輩看護師がそう言ってたことを思い出して、ぎくりと喉が鳴る。
「でも、Aさんは、誰よりも必死に僕のケアに当たってくれました。看護師さんだから、というのももちろんですが、真摯に僕に向き合ってくれた人に出会えたことが、とても嬉しかった。
だから、治療が終わったら、
真っ先に、僕はAさんに会いたい」
野坂くんの目が揺るがないから、本物の気持ちだと思った。
そう言ってくれた人は貴方が初めてだよ。
「そう、かあ....私、看護師やっててよかった」
「僕も、脳腫瘍になってよかった」
「それは良くない」
思わず注意すると、冗談ですよと笑って言葉が返ってきた。
じわりと浮かぶ涙を、野坂くんが静かに拭ってくれる。
「ありがとう。野坂くん、サッカー、頑張ってね！応援してるよ！」
「こちらこそ。Aさんのおかげでいろいろと頑張れそうです」
これから辛いリハビリが待っているけれど、君なら大丈夫！
そう期待を込めて、検査室まで私達は再度足を進めた。
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Setsuki.(プロフ) - 風丸の話の時に彗星ガールズの歌詞の一部があって感動しました！← (2019年3月28日 21時) (
レス) id: 77812d9344 (このIDを非表示/違反報告)
Zero - 彼方さん» 有難うございます(感涙)！ (2019年3月17日 10時) (レス) id: fec557507a (このIDを非表示/違反報告)
彼方(プロフ) - Zeroさん» リクエストありがとうございます！話数の関係でもしかしたら次の小説に移動しちゃいますがまたその都度更新させていただきますね(*´`) (2019年3月16日 19時) (レス) id: 35021d0064 (このIDを非表示/違反報告)
Zero - リクエストお願いします!!難しいと思いますけど､不動さんって書けますか?無理だったら全然良いです!! (2019年3月16日 15時) (レス) id: fec557507a (このIDを非表示/違反報告)
彼方(プロフ) - 妄想乙娘さん» 全て読んでいただけたんですね！(；＿；)とても嬉しいです！これからも頑張ります！ありがとうございます(〃´-`〃) (2019年3月12日 21時) (レス) id: 35021d0064 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：彼方 | 作成日時：2019年3月4日 8時
