08ｰ2 ページ17
「Aさん、大丈夫なの？」
「心配ないよ」
という確証はないけど。
心配の色を浮かべた杏奈さんが、僕に声をかけてくれた。
「野坂くんがついてるから、安心ね」
「そんな。僕は何もしていないよ」
そう、僕は"まだ"何もしていない。
上品に笑う彼女に、僕は意味ありげに笑いかけた。
そして、チームメイトのみんなに一声かけてから、
未だ気持ち良さそうに眠るAを、彼女の部屋まで運んだ。
「ごめん、悠馬。本当に私、学習しないよね」
僕の腕の中で、彼女が謝る。
その表情は、申し訳なさそうで、心做しかむすっとしているように見えた。
「少し仮眠とったら、また始めよっか。僕も起きてるから」
「ところで」
「うん？」
「杏奈ちゃんの前でも、あんな表情できるんだーって、思って...」
「.......うん？」
「あれ、意地悪する前の何か企んでる悠馬の顔。私以外の子にも出来ちゃうんだって思って」
Aはそう言うと、端正な顔をふにゃりと歪ませて、不機嫌を顕にした。
そして、僕に背を向けて寝返りをうった。
なんだ。起きてたのか、あの時。
つまり、そういうことか。
「嫉妬、してるんだ？」
「別に」
彼女の正面に回ると、未だに不機嫌そうなAと対照的に、僕はにこにこと微笑んで対面する。
そんなAも綺麗だと思った。愛しいとさえ感じた。
「A」
「.......」
「目を、覚まさせてあげようか」
これで、課題にも集中できるよ。
僕がそう言うと、どういうこと？と彼女が少しだけこっちに顔を向けて、元々大きな目を更に大きく、丸くさせた。
そんなAがこっちを向いたことを見計らって、僕はその小さな唇に自身の唇を合わせた。
「.....！？」
驚く彼女を尻目に、愛しいと、大好きだという気持ちを流し込むように、僕は何度も何度も角度を変えて口付けを交わす。
静かな部屋に、ちゅ、とリップ音。
事を終えて、目を開けると、真っ赤に染めた顔のAが固まって、ぱちくりと瞬きをしていた。
「どう？もっとする？」
なんて意地悪に口の端をあげると、
「.......する」
と、彼女は小さく頷き、僕に身体を擦り寄せた。
しばらく僕達は、2人きりの甘い時間に浸る。
「目を覚まさせてあげただけなんだけどな？」
「もう十分、むしろ眠れなくなっちゃった」
「ははっ」
それはそれで困ったな。
僕はこれからもこんな風に、彼女に振り回されるのだろうか。
でも、別に悪くないかと感じた。
09ｰ1 神様の看病【吉良ヒロト】→←08ｰ1 皇帝の恋煩い【野坂悠馬】
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 87人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Setsuki.(プロフ) - 風丸の話の時に彗星ガールズの歌詞の一部があって感動しました！← (2019年3月28日 21時) (
レス) id: 77812d9344 (このIDを非表示/違反報告)
Zero - 彼方さん» 有難うございます(感涙)！ (2019年3月17日 10時) (レス) id: fec557507a (このIDを非表示/違反報告)
彼方(プロフ) - Zeroさん» リクエストありがとうございます！話数の関係でもしかしたら次の小説に移動しちゃいますがまたその都度更新させていただきますね(*´`) (2019年3月16日 19時) (レス) id: 35021d0064 (このIDを非表示/違反報告)
Zero - リクエストお願いします!!難しいと思いますけど､不動さんって書けますか?無理だったら全然良いです!! (2019年3月16日 15時) (レス) id: fec557507a (このIDを非表示/違反報告)
彼方(プロフ) - 妄想乙娘さん» 全て読んでいただけたんですね！(；＿；)とても嬉しいです！これからも頑張ります！ありがとうございます(〃´-`〃) (2019年3月12日 21時) (レス) id: 35021d0064 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：彼方 | 作成日時：2019年3月4日 8時
