堕落。《渡辺

Story…9 ページ9

高そうなマンションの一室。



渡辺
『ちょっと散らかってるけど、ごめん。』


『…大丈夫です。』




失礼に当たらないよう、辺りを見渡してみた。


でも、女性がいるようには感じられない。




男の一人暮らしっていえば…そんな部屋。



渡辺
『片付ける暇が最近なくてさ。

いつもは、綺麗好きだって言われるぐらいなんだけどね。』



『そうなんですか…？』


渡辺
『そこのソファーにでも座ってて。
着替えてくる。』



『…はい。』





そう言って、一度は寝室に消えた彼だけど

すぐにまた戻ってきた。




『どうかしました？』


渡辺
『…その敬語、なんとかなんない？』



『あ…でもこれは、、』


渡辺
『…今は客とキャストじゃない。』



”次戻ってきて敬語外れてなかったら…お仕置きすっかな。”




『え…』



ﾊﾞﾀﾝｯ…。





今度こそ閉められたドア。



『…っ。』








いい大人が

男の言葉に振り回されて、騒がしいこの胸。





純粋で、汚れのない心なんて

とっくに捨てたはず。



誰かに愛されたい。

…でもそれは叶わないと知ってる。

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