春を消してしまえば【青】

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渡辺「なんだよ、ばかって」


「ばかなんて言ったっけ」


渡辺「試合の時」


「あ…あれはなんていうか……勢いで」









翔太が諦めたような顔してるから、つい叫んでしまったんだ

試合中の人に向かってばかって叫ぶなんて、今考えると有り得ないな









渡辺「んはは、俺さ、あれでがんばろって思えたんだよね」


「そうなの…？」


渡辺「うん。まぁ負けたことには変わりないけど、あのまま何もしなかったら後悔してた。
ちゃんと最後やり切って終われたからさ……その………ありがとう」


「かっこよかったよ」


渡辺「まじ？」


「うん、かっこよかった」


渡辺「じゃあさ…俺試合がんばったからさ…」


「ん？」


渡辺「夏祭り、俺と行こうよ」


「え…？蓮たちと約束してるんだってば」


渡辺「いつも俺らと一緒に行ってたじゃん」


「いつもって…」









翔太は彼女と行ってたじゃん、私を置いて









「先に蓮たちと約束してたから」


渡辺「……そう」









どうしてそんなに寂しそうな顔をするの？

私だって翔太が彼女と行くって言った時、寂しかったんだよ？









渡辺「応援してくれてありがとな、それ言いたかっただけだから」


「うん」


じゃーな、と言って部屋から出て行った

急に彼女を作って突き放したと思えば、こうして誘ってくる


優しく抱きしめてくれたり、守ってくれたり

翔太は何がしたいの？

これ以上私の気持ちを掻き乱さないで…









佐久間「A〜！俺ら帰るね！」









家の前からベランダにいる私に向かってみんなが手を振る









「うん、ばいばい！おつかれさま」


深澤「寂しくなったら電話してよ〜？」


岩本「ふっかが電話したいだけだろ」


深澤「だって夏休みだよ？Aに会えないじゃん」


阿部「勉強しなよ」










そっか、部活も終わったから本格的に受験勉強が始まるんだ









「がんばってね」









翔太は目が合うとすぐに逸らし、何も言わずに帰って行った





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