· ページ35
そうこうしているうちに、俺んちの近くに来た。
地下の停車場に停めてもらうようにお願いするとまた混乱した様子の楠さん。
まぁ停車場なんてそうそうないよな、普通のマンションには。ここのマンションはセキュリティ面も優れていて、芸能人向きというか。そういう対応もしっかりされている。
停車場に停まった車。さっきのコンビニと違い俺は一言も口を出さなかったけど、うまく停められていた。もともとセンスがいいんだろうな。
岩「お、寄ってます。いいですね。だいぶ慣れました？」
A「おかげさまで、１人で事務所に帰る自信が生まれました」
岩「それはよかった。気をつけて返ってくださいね」
A「はい、ありがとうございます。では」
岩「あっ、待って」
発車するために閉じられる窓。
これだけは言っとかなきゃ…ということを思い出して、呼び止める。
A「なにか伝え忘れとかありました？」
岩「伝え忘れと言うか…」
A「ん？」
岩「あの、俺ら…その、個性がすごく強いんですよね。だからその…付き合っていくの大変かと思うんですけど」
A「はい」
岩「目黒も言ってましたが、俺たちといっしょに、がんばってくれますか」
俺らは９人、それぞれが個性が強い。
芸能人として、グループとして、それはいいところだと思う。かぶらない個性、それは強みだ。
だけど、全員と付き合わなければならないマネージャーという立場からしたらどうだろう。
人間同士、合うタイプ苦手なタイプあるだろう。ましてや俺らは９人。合わない人間が１人２人いたっておかしくない。
楠さんはまだ１日目。まだしっかり俺らの事を知らない状態でこんなことを聞くのは酷かもしれない。
けど、俺らと楠さんの未来のために、どうしても聞いておきたかった。
A「…新しい世界、連れてってくれるんですよね」
岩「！！はい！」
A「新しい世界がどんな物なのか、今はまだ知らない事ばかりなので想像もできないんですけど」
岩「はい」
A「沢山勉強します。沢山努力します。なので、連れてって貰う、ではなく、一緒に新しい世界の扉を開けるような人間になります」
岩「！」
A「頑張らせてください、一緒に」
岩「はい！宜しくお願いします！」
初めての、握手。
俺の手にすっぽり収まる小さな手。
この人は信じられる。
この人といっしょに頑張りたい。
そう思った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2726人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まめ
| 作成日時：2022年10月22日 14時
