その先へ～I'd like to approach～ (ページ10)

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思い出した5年前の出来事～消えたデータ～ページ10

「おはようございます」

『咲坂、おはよう。あっ来週、横浜支社に送付予定の資料ってどこまで出来てる？』

「それでしたら、二宮と昨日打ち合わせして…えっと、本日の午後には仕上がると思います」

『ありがとう。ちょっと確認したい箇所があるから、データ画面出してくれない？その間に、コーヒー入れて来るから』

「わかりました」

櫻井さんが自販機に向かったのを見送って
自分のPCを立ち上げた。

「えっ………うそ…」

昨日、ある程度仕上げた資料のフォルダ…
デスクトップはまっさらで

【ごみ箱】

のアイコンしか残ってない。
それどころか、PCは初期化状態になっていた。

「(昨日、USBに全部コピーしたから大丈夫、だいじょうぶ、まだ泣かない。あぁ早くPWかけれる様になったら、こんな事もおこらないのに…)」

新入社員に与えられたPCは教育機関の2か月間は
PWがかけられない様になってる。

「咲坂おはよ。言いそびれたんだけどさ、この間、社員食堂で懐かしい人と会ってな、今度飲みに行こうって話になって…ってどうした？」

「あっ、いや…櫻井さんにデータ出しとく様に言われたんだけど…二宮のPCで代わりに出しといてくれない？私、ロッカールームに忘れ物しちゃってさ」

「うん、まぁいいけど、何かあったんじゃ…」

「いやっ、何もないよ。すぐ戻るから、後よろしくね」

「(まだ泣かない、ロッカールームまでは…)」

『あれ？咲坂？今コーヒー淹れてきたのに』

あぁ、今、一番会いたくない人。

「すみません、ちょっと忘れ物しちゃって…二宮がちょうど出社してきたので、確認の件は伝えてあります」

目も合わせずに、とにかくロッカールームに急いだ。

「ふぅ。誰かの恨みでも買ったのかな…」

始業の時間も近づいてる。
でも、こんな顔じゃ出ていけない…
櫻井さんにも悪いことしちゃった。
二宮にも謝らなきゃ…

「そうだ…中里さんに連絡しよう…」