1話 ページ3
チチチチチ…
『ん…』
小鳥の声に目を覚まし、この森にもまた朝が来たことを知る。
体を上半身だけゆっくり起こして、近くの窓に目をやった。
雨の音がしない…止んだのかな
昨日の夜まで屋根や窓を叩いていた雨はすっかり止んだようで、かわりに優しい陽の光がさしている。
葛「んー…」
隣に寝ている恋人が、ちょうど顔にさす光を避け、シーツに潜り込んだ。
『…』
そんな彼を起こさないよう、静かにベッドから降り、足音を立てないように一階へ向かう。昔彼が街で買ってきた、ボロボロの靴をつっかけて。
『〜♪』
キィ…ギッ、ギッ、ギッ、
しばらくすると、二階から、ドアの開く音、ゆっくりと階段を降りてくる音が響いてきた。
『おはよ』
葛「んー…はよ、」
後ろから寄りかかられ、声をかけると、まだ寝ぼけたような挨拶が返ってくる。
葛「水は、」
『もう汲んじゃった』
葛「…薪、」
『さっき取ってきた』
葛「飯、は………作ってますね、」
『はい』
ばつが悪そうなサーシャにくすくすと笑ってしまう。今日ぐっすりだったもんなぁ、
いつもなら私が起きたあとはすぐに起きて仕事も手分けするのに、今日は全て一人で片付けてしまった。
葛「……今日買い出し行ってくる」
『わかった、ありがと』
いつもは面倒くさがってあまりやらない街への買い出しを、私への罪悪感(?)からか買って出るサーシャ。
そーいえば食料が足りなくなってきたし…あ、糸も足りなかったんだよな。丁度いいや、買ってきてもらお。
朝食を済ませると、人間に姿を変えたサーシャが、街へ行く準備を進めていた。
葛「A、かんぬきかけとけよ」
『はいはい』
葛「誰か来てもドア開けんなよ」
『わかったわかった』
葛「あと、紫髪のガキには
『近づかない、でしょ?』
……ん。すぐ帰ってくるから」
『はーい、行ってらっしゃい』
私の返事に満足したように頷くと、家を出ていった。
これいつも言われてるけど、私のこと小さい子だと思ってる?
…紫髪のガキって、誰なんだろ。
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作者名:禁煙 | 作成日時:2023年5月2日 19時