DOSON (ページ43)

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公演が始まってしまえば、Aはすごく調子が良さそうにまで見えた

先程までの緊張はどこえやら、いつも通り身体が大きく動いていて、表情も豊かで、声も震えること無く透き通った美声を響かせている

　

楽しそうにステージを飛び回って、シズニにファンサをして、そんな様子に少し安心する

VCR中にヘアメイクを直してもらっているAに声をかけに行く

ty「疲れてない？大丈夫？」

『まだ大丈夫だけど、いつもより疲れてる気がする』

ty「ちゃんと酸素吸入しときなね、体力回復早くなるから」

『うん、楽しい分やっぱりコンサートは体力的にきついなぁ』

ty「あんまり追い込みすぎないようにね」

『…でも妥協はしたくないからぎりぎり攻める』

だめだって、と言いかけたところでスタッフさんに呼ばれてしまい、Aの傍を離れざるを得なくなってしまった

Aはパフォーマンスにおいて、少しでも力を抜くことを好まない

特にボーイズグループに所属しているということで、僕ら男性の体力やパフォーマンスの力強さに劣らないように魅せなければいけないと強く感じているようだった

とはいえ、どうしても基礎体力は僕らとは違うし、
限界を攻めようとするのは危険だ

特に今日みたいに体調が優れなさそうな日には、

その後も何事もなくコンサートは順調に進んでいく

Aのことはもちろん気にするようにして、途中のMCタイムには真っ先にAに水のボトルを手渡しにいく

やっぱり息もそれなりに上がっていて、腰に手を当てて荒い呼吸を落ち着かせようとするAはいつもより体力の消耗が激しく汗もいつもよりかいているようだった

『水ありがと、』

ty「…結構きつい？アンコール前の着替えで裏入れるまであと3曲あるけど、」

『…正直、でもなんとか最後まで頑張るから、』

ty「やばそうだったら一回捌けても大丈夫だよ」

『ううん、やりきれる、』

僕が心配しすぎないように笑顔を見せて、はっきりと最後までやりたいと言い切ったAを止める気にはならなかった

それぐらいの覚悟が見えたから

残り3曲、恐らくこのツアーで1番盛り上がる部分で、アップテンポの激しい振り付けのものばかり

Aの熱い手をとって、エネルギーを送り込むように強く握った

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