DOSON (ページ37)

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それは入所して3週間が過ぎた時のこと

大手事務所にスカウトされたという時点で怖気づいていたし、自信がある方では無かった僕

この3週間で実力もあり背が高くて一般人とはかけ離れた見た目の練習生にたくさん出会って、ここで生き残る自信を失ってしまった

深夜練習が終わり練習生が帰っていく中、僕は練習室の端に腰を降ろしたまま動けずにいた

疲れていたし、動く気力さえ無かった

そうしていると突然近づいた足音とドアが開く音

俯いていた顔を上げると、マスクはしていたもののすぐにそれがA先輩だと分かった

『あっ、ごめんなさい、誰もいないのに電気ついてるなって思って開けちゃいました、』

wb「…ぇ、あ、すいません、もう出ます、！」

　
　

相手が画面越しにしか見たことがなかった憧れの先輩だということに驚いて挨拶も忘れて慌てて去ろうとすると、また声をかけられた

『あの、大丈夫ですか…？』
　

wb「え、…なんで、」

『…間違ってたらごめんなさいなんですけど、すごいしんどそうに見えて、』

wb「…実は、」

僕の状態を一目で言い当てた先輩にいっそのこと全て話してしまおうと心に決めると、僕の隣に座って話を聞いてくれた

当時の僕はきっと自分の心配を話せる相手が必要だったんだと思う

『ウォンビンくんは練習生になって間もないのにもう危機感を持ててるってことでしょ？それってすごいことなんじゃないのかな』

wb「…え、？」

『スカウトされたってことはアーティストとしての素質を認められたってことだし、それでも自分の持っているものに驕らないで頑張ってるんじゃん、それは既にすごいんだよ
負担を感じるのは、周りの人達がウォンビンくんに伸びしろがあるって期待してるからなんだよ』

A先輩の言葉は一つ一つ重みがあって僕を前向きにさせてくれて

そうやって話す瞳は輝いていて、ああこの人みたいになりたいって本能で思った

『私ウォンビンくんがいつかデビューするの楽しみにしてるし応援してる』

wb「僕次はA先輩と所属アーティストとして会えるように頑張ります、」

固く交わした握手の感触は今でも忘れない

それから一度も会社で会ったことは無いけど、僕は苦しいときにA先輩の言葉を思い出しながら練習生生活を続けて生き残り、晴れてデビューを果たしたのだ

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