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1日の勤務を終え、あとは急変がなければカルテチェックをして帰れるかな、と考えながら外来の待合室を通り抜ける。

平日の夕方にも関わらず、待合室は6割ほど埋まっていた。





ふと小さな男の子に目が留まる。


小児科ではないのに子どもがいるってことが違和感だったわけじゃない。



立ちすくんだままふらふらと揺れる身体に、医者の勘とも言うべき嫌な予感がした。






どうにも放っておけなくて、背後からその子に近づく。




舘『ねぇ、僕?』


少しかがんでその子の肩を優しくたたく。

くるんと振り返ったその子は、元々色白なのだろう頬を真っ赤に染めていた。






舘『お母さんは?』
『かぁちゃ……』


その子の目線が、いくつかある診察室のドアの上をふわふわと漂う。



母親の体調が悪くて病院に来たってことか?
だとしても、こんなにしんどそうな子を1人で待合室に残しておくとは考えづらい。

胸の中で違和感が膨らむ。





舘『僕、お名前は?』



目線を合わせるようにその子の間にしゃがむ。

けほけほ、という嫌な咳が耳につく。





『さっくん……』
舘『さっくんね。じゃあさっくん、先生と一緒にお母さん待ってようか』



熱もかなりありそうだし、こうして立っているのも相当しんどいだろう。

だけど、さっくんは小さく首を振って。





佐『おみず、』
舘『お水飲む? ちょっと待ってね、』



ときおり挟まれる咳には、喘鳴のようなものが混ざっている。





水を持ってきてあげてもいいんだけど、さっくんを1人残していくのは気が引ける。


とはいえ母親が戻ってくる可能性があるし、連れていくことはできない。




どうしたものか、思案しながら立ち上がろうとしたときだった。







舘『__っ! っぶな……』


ぐらっと揺れたさっくんの身体が、地面に吸い込まれるように倒れ込んでいく。


ぎりぎりのところで受け止め、脈と意識の確認。
触れた首筋は燃えるように熱かった。





舘『さっくん、さっくん分かる? ……よかった、意識はあるね』

佐『……ぁ、れ?』





抱き寄せた小さな身体から、ひゅーひゅーとすきま風のような音が漏れる。




保護者は未だ行方不明だけど、医者として倒れかけた子を放っておくなんてことはできない。

今すぐ楽にしてあげたかった。

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九花(プロフ) - 多胡春那さん» コメントありがとうございます。次のお話につなげられそうなので、少し考えてみますね! (2021年5月26日 21時) (レス) id: 0cc2e8f816 (このIDを非表示/違反報告)
多胡春那(プロフ) - 過去の2人が出会った時を思い出してるとこでもう少し先も知りたいです! (2021年5月21日 0時) (レス) id: a4579094f8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:九花 | 作成日時:2021年5月20日 22時

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