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向「……よかったんかなぁ」
眠る佐久間をいとおしそうに見つめた康二が、ぽつりとつぶやく。
舘「何が?」
ゆっくりと顔を上げた康二の表情には、いつものような明るさはない。
向「さっくんと暮らすって決断、ほんまに正しかったんかなって」
康二は、佐久間に似て少し考えすぎてしまうところがあって。
思わず、もっと楽に生きていいんだよって言いたくなってしまう。
向「さっくんどうしても無理してまうし、やっぱり俺じゃ姉ちゃんの代わりには、」
目「康二、そんなことない」
みるみるネガティブになっていく康二に、耐えかねた目黒が言葉を挟む。
まっすぐで純粋で、少し不器用なところ。
本当に、佐久間と康二はよく似ていると思う。
舘「佐久間が一番頼れるのは、康二だけなんだから。康二がそんなこと言ってどうするの」
まさか忘れたわけじゃないだろう。
佐久間と康二が一緒に暮らし始めた、佐久間が小3のころのこと。
入院中の佐久間は本当にしんどいって言葉を言わなくて、ナースコールさえ押してくれなかった。
心電図とかパルスオキシメーターとか、佐久間につなげてる機械が鳴って初めて異変に気づくことも多くて。
点滴が漏れて腕が腫れてしまっているのに、看護師が気づくまで何も言わなかったこともあった。
「他人」である俺らに頼るってことは、佐久間にとって難しかったんだろう。
でも、康二がお見舞いに来たときだけは違った。
力の入らない手で康二の服を掴んで、初めてぽろぽろと涙をこぼしたのだ。
帰らないで、ってすがるようにして泣く佐久間は痛々しくて、でもなんだか少し安心した。
やっと年齢相応の、子どもらしい佐久間が見られたから。
佐久間が少しずつ俺らにも弱音を吐いてくれるようになったのは、それからだった。
向「そぉやんな? なんやろ、どぉしてもたまに不安になってまうわ」
再び佐久間に目線を戻した康二が、小さく笑みを浮かべる。
たまには康二も息抜きが必要だし、もっとこうして頼ってくれていいんだけどね。
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九花(プロフ) - 多胡春那さん» コメントありがとうございます。次のお話につなげられそうなので、少し考えてみますね! (2021年5月26日 21時) (レス) id: 0cc2e8f816 (このIDを非表示/違反報告)
多胡春那(プロフ) - 過去の2人が出会った時を思い出してるとこでもう少し先も知りたいです! (2021年5月21日 0時) (レス) id: a4579094f8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:九花 | 作成日時:2021年5月20日 22時