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また車に乗り込んで、今度はスタッフさんの運転で宿に向かう。
ペットボトルの水で解熱剤を流し込んで、窓の外を眺める。
まだ効果が切れた感じもないし、なんならもう直っちゃったんじゃないかとも思うけど、今日は長丁場だから。
時刻は午後2時過ぎ、太陽は元気に光を降り注いでいる。
ラウの体調が悪いこともあって、少し休ませてもらえることになった。
ひかるとラウ、めめと翔太、舘さまと阿部ちゃんがそれぞれ2人席で、おれと康二とふっかは1人席。
テンションを上げていたもののやっぱりしんどかったのかすぐに寝てしまったラウを、パパとママ__ひかるとふっか__が優しいまなざしで見つめる。
そのうち1人、2人と眠りに落ちる人も出てきて、おれも窓に頭を預けるようにして目をつぶった。
舘「……ま、さくま!着いたよ」
佐「……っぁあ、……りょうた」
軽く揺すられて目を開けると、薄暗くなったバスの外に降りていくメンバーの姿。
のびをしてみるけど身体の違和感は抜けなくて、まさか、考えたくもないけど。
朝より悪化した、とか……?
……やめやめ、病は気からっていうし。
だってさっき寝る前は、全然大丈夫だったのに。
きっと寝てたせいで、体温が上がってるだけ。
阿「めっちゃ寝てたけど、大丈夫?」
佐「んぇ、おれそんな寝てた?」
阿「うん、起こしてんのになかなか目覚まさなかった」
佐「まじかぁ」
おれらもバスから降りて、今日泊まる宿へと歩を進める。
__と、そのときだった。
佐「……っ、」
ぐるん、と視界が回る感覚。
目の前がちかちかして、自分がどちらを向いているのかさえも分からなくなる。
阿「さくま?」
少し前を歩いていたあべちゃんが、突然立ち止まったおれを気遣うように振り返ったのが、かろうじて分かって。
佐「っごめ、先行って?ほどけちゃった」
とっさにしゃがんで、ほどけてもいない靴ひもを結び直す。
阿「ほんと?でもいいよ、待ってるから」
立っているあべちゃんから見えないのをいいことに目をつぶって深呼吸を繰り返せば、やっと世界が元通りになった。
佐「よし、っと」
阿「ん、行こっか」
まだちょっと怖くて、ゆっくりと立ち上がる。
大丈夫、大丈夫。
おれは元気だもん。
もう一度大きく息を吸って、この後の撮影に向けてスイッチを入れた。
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九花(プロフ) - れなさん» うれしいです、ありがとうございます!続きも楽しんでいただけるように頑張りますね! (2020年11月18日 19時) (レス) id: b71fcc7439 (このIDを非表示/違反報告)
九花(プロフ) - 葉月さん» うれしいコメントありがとうございます。執筆速度は遅いですが、今後も期待に応えられるよう頑張りますので応援よろしくお願いします! (2020年11月18日 19時) (レス) id: b71fcc7439 (このIDを非表示/違反報告)
れな - えええもうお気に入りです!! (2020年11月17日 21時) (レス) id: fb5eeefa96 (このIDを非表示/違反報告)
葉月(プロフ) - 前から読ましていただいています。いつも更新が待ち遠しくて、更新されると飛んできてしまいます!これからも更新頑張ってください! (2020年11月17日 19時) (レス) id: 5fa35a3299 (このIDを非表示/違反報告)
九花(プロフ) - バナナさん» コメントありがとうございます。楽しんでいただけているようでとてもうれしいです。今後も頑張りますので、よろしくお願いします! (2020年11月16日 19時) (レス) id: b71fcc7439 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:九花 | 作成日時:2020年11月1日 17時