【す/の】君以上の人には【短編集】 (ページ9)

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ホワイトデー<m g r> ページ9

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『れん先輩、これあげます。』

なんとなく、緊張してるのを知られたくなくて平静を装ってチョコを手渡す。

「…ふーん、本命？」

ニコッと整った顔で微笑む先輩。客観的に普通にイケメンだと思う。でも私は騙されない。

『…自惚れないでください。』

「はははっ！」

私が真顔で答えると何がそんなに面白いのか、大げさに笑いだす。
ひとつ上のれん先輩は、後輩の私とも仲良くしてくれる上に学校で一番の美形で、私は当然のように恋に落ちた。
でもライバルも多く私じゃ釣り合わないので仲の良い後輩というポジションをキープしようと決意し、私の片想いは数ヵ月前にあっさりと幕を閉じた。

「……お前ほんと面白いな。」

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『先輩もうすぐホワイトデーですよ。』

階段に一人座り込んでいた先輩に後ろから声をかけながら、私も隣に座る。

「うわっびっくりしたぁ……え？ホワイトデー？」

驚いた顔を面倒くさそうに歪める。

『れん先輩チョコめちゃくちゃもらったんですよね。お返し、大変ですね。』

「しねーよお返しなんか。」

…まぁ、言うと思ったけど。

『え！？ホワイトデーくれないんですか！？私にも？』

冗談半分で言うと歪んだ顔がふははっと崩れた。

「何でお前にだけあげるんだよ。…お前ほんと最高だな。」

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紙袋をさげて上機嫌で家に帰ろうとしたとき、れん先輩に呼び止められた。

「…何その袋。」

『え？あ、ホワイトデーですよ今日は。普通の人はちゃんとお返しくれるんですよ。』

「へー、男？」

『全部女の子ですよ』

れん先輩以外の男になんてあげません、という言葉を飲み込んで笑っていると、先輩は鞄からなにやら可愛らしい包みを取り出して渡してきた。

「ほら、お返し。」

『え、ありがとうございます…お返ししないんじゃなかったんですか？』

ふ、と笑いながら、頭に手を乗せられる。

「お前だけな。…いつも面白いから。」

顔を真っ赤に染めた私はもう答えることもできない。

…諦めたはずの片想い。

またどうしようもなく、好きになってしまった。

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女に何かもらってもお礼とか言わなそう。偏見です。