【す/の】君以上の人には【短編集】 (ページ5)

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ホワイトデー<r u l> ページ5

「Aちゃん！」

家の扉を開けると、そこには大量のスーパーの袋を抱えた年下の彼氏が居た。

『どうしたの？その袋。』

彼が靴を脱ぎながら答える。

ら「あのね、一緒にね、お菓子つくりたいの！」

『お菓子？』

ら「クッキー！」

唐突だなぁと思うと同時に、彼の若さを実感する。
お菓子を作りたがったり思い付いたら即行動するあたりがやっぱり子供だ。

『らうお菓子作ったことあるの？』

ら「無い。だからAちゃんに教えてほしい…材料は完璧に買ってきたから！ね、お願いします！」

彼のお願いを私は絶対に断れないこと、知っててやってるのかな。…でもきっと天然物だろうなぁと思う。彼はまだまだ子供だし。

『いーよ。』

そういって私は微笑んだ。

￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣

『ほら、これ混ぜて。』

「あ、俺それならできる！」

『らうっ！よそ見しちゃダメだよ』

「うわぁ！ムズ！」

『すごいすごい』

「俺才能あるかも！」

―――彼と時間はすごく楽しくて。
私も子供みたいに、彼と一緒に笑ってはしゃいだ。

『あ、焼けたよ』

「どう！？きれいに焼けたかな！」

一緒に見よ、と声をかけられて。

「『せーのっ」』

『わ、すごい』

「うわ！いい感じじゃん！」

『ね！おいしそう！』

彼のやりたいことが出来て良かったなと思いながら隣を見ると、彼もこっちを見ていた。

「ねぇAちゃん、このクッキー俺からのホワイトデー。」

『え…』

びっくりして、一瞬固まる。そして気づく。

『あ、そっか…今日ホワイトデーかぁ』

「うん、Aちゃんがくれたバレンタインすごい嬉しくて。でも俺子供だから、どんなお返しがいいか分かんなくて…」

落とした視線をまた私の顔に戻して彼は続ける。

「手作りだったら気持ちが伝わるかなって。結局一人じゃできなくてAちゃんに手伝ってもらったけど…。」

身を屈めて顔を覗きこまれる。

「どうかな、喜んで貰えた？」

『うん。嬉しい。』

かわいいかわいい彼氏からのお返しに思わず笑顔になってしまう。

「良かった」

そう言いながら彼はできたてのクッキーを一枚手に取る。
そして私の唇に当てる。

「ふふ、一緒に食べよ？」

この時の私はまだ、
子供だと思ってた彼からクッキーを全部あーんして食べさせられるとは思っていなかった。

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他の８人は平気なのに、rうちゃんで妄想するとすごく罪悪感が湧きます。