そばにいてね。 (ページ30)

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岩本side

目を閉じて痛みに耐えていたら、楽屋の扉を開く音が聞こえた。俺の次に楽屋入りしたのは、いつも早い阿部。1度電気がついたけど、状況を察してくれたらしい阿部がすぐに消してくれたのもわかった。

「何かあったら誰でもいいからすぐ言ってね」

そう言われたけど、打ち合わせもふっかに変わって貰ったり、長く休めるようにってヘアメイクも1番最後になるように手配してくれたり、もうたくさん色んなことをして貰った。なにより、誰になんて言えばいいかがわからなくて。

撮影前、せめて撮影が終わって楽屋に戻るまでは頑張ろうと喝を入れた。

カメラのフラッシュがいつもの何倍も眩しく感じる。カメラマンさんがシャッターを切る度、頭痛が酷くなるような気がした。

なるべく気にしないように、意識集中。何度か「岩本くんもう少し笑って」なんて言われた気がするけど、正直自分がそれに応えられているのかそうでないのかも曖昧で。

撮影終了の声を聞いて、気を張ってたのがふっと緩んだ気がした。楽屋まで頑張りたいのに、気にしないようにしていた鋭い痛みはどんどん強くなっていく。皆の後ろ姿が見えなくなっていく。

手を伸ばせば何かにあたって、縋るようにぎゅっと掴んだ。

「ひかる？大丈夫？」

この優しい声は――ああ、阿部だ。

ちょっと休めば歩けるようになるから大丈夫って言いたいのに、口を開けば痛みに耐えられない情けない声が漏れるだけ。

「……っ、う…」

「痛いね。ちょっとごめんね」

頭から何かを掛けられる。阿部の、カーディガン、かな。光が目に当たらなくなってちょっと楽かも。