32‐実弥の後輩 ページ32
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昨日炭彦君に相談に乗ってもらったのは良いものの……。
あれから実弥と会う気にはなれなくて、結局塾に行ってそのまま帰ってしまった。
でもいつまでもこのままじゃダメだ。
実弥に会って、一昨日の事を謝らなくちゃ。
「こんにちはぁ…」
「こんにちは。どうされましたか?」
土曜日のおやつ時。
控えめに覗いた交番には、実弥の姿は無かった。
代わりに居たのは、少しきつめの目をした、優しい笑顔のお兄さん。
制帽から見え隠れする刈り上げられたこめかみが、彼のやんちゃさを仄めかせている。
「あの……さねみ、実弥さんって、居ますか?」
「実弥? ああ、不死川先輩なら、今日は非番ですよ」
「非番……」
「何か御用ですか?」
入り口までわざわざ出迎えに来てくれた名も知らぬお巡りさんは、私のためにとわざわざ椅子を引いてくれた。
近くで見た彼は、何故か少しだけ実弥の面影があった。
…言い出しにくい。何ていえば良いんだろう。
中々話し出さずもごもごしている私をじっと見守っていたお巡りさんは、やがて「あ」と声を上げた。
「もしかして、先輩の言ってたAさん?」
「え? 何で私の名前……」
「やっぱり!
昨日はAさんのおかげで大変だったんですから」
「えええっ?」
何だ、それ。どんな因果関係があったら昨日の実弥に私が影響するんだ。
思いがけず鼻から声が漏れ出てしまったけれど、そんな私にはあえて触れず目の前の大きな男性は笑った。
「すいません、俺は玄弥です!
不死川先輩の後輩なんですけど、Aさんの事は先輩から良く聞いてます」
「私の事を? …実弥が、話すんですか? 悪口?」
「ふは、まさか!
一昨日も昨日も愚痴という名の惚気だったし」
話を聞けば、実弥はどうやらこの玄弥という人に逐一私との出来事を相談しているらしく、私の名前も大体の性格も知っているようだ。
……それから、勿論私の年齢も。
「……引かないの?」
「えっ、何が?」
「高校生が…5つも上の人好きになるなんて、おかしいって思ったり…」
「何だそれ! 思うワケねェよ」
くしゃっと笑う玄弥の目にしわが寄る。
その単純な一言が、実弥にそっくりな笑い方と相まって揺れていた私の心に柱を作ってくれたみたいだ。
「好きになるのに年齢も、言い訳も条件も関係ねェ
そんな下らねェ事で、好きって気持ちをどうにか出来るわけでもないしな」
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k - おそらまめさあああああああん、、(4回目)いや、あの最高でした。胸きゅんってこういうことを言うのですね、、やはり実弥のかっこよさは最高ということですね。(?) (6月15日 23時) (レス) @page46 id: 5d2f3eba17 (このIDを非表示/違反報告)
ha0824du(プロフ) - 赤の他人で恐縮ですが言わせてもらうと文才すぎやろ〜才能爆発やん!の二言です。ありがとうございます。はい。 (2022年10月6日 22時) (レス) @page46 id: 0233a38cc7 (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 39ページ 舌を見ると の 舌 は 下 ではないでしょうか? (2021年6月4日 13時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - Lunaさん» Luna様、最後までご愛読ありがとうございました!最後は少し駆け足になってしまいましたが、胸きゅんお届けできて嬉しいです(^^)かっこいい実弥さんは永久不滅です! (2021年5月29日 1時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
Luna(プロフ) - はじめまして。胸きゅんの素敵なお話ありがとうございました。実弥さんかっこよすぎましたっ!! (2021年5月28日 16時) (レス) id: acb6885805 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年10月22日 21時