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「…ぇ?」





声にならない、掠れた音が漏れた。

街のど真ん中で、金縛りにあったみたいに、ただ立ち尽くすことしかできない。




どうして。
どうして。
どうして。





あの人と、あの子が、一緒にいるの?





「…っは、」





信じられない、信じたくない。

見たくない光景だって、分かっているのに、視線を逸らせない。

反対に、呼吸ばかりが浅くなっていく。





(…嫌だ)





何が、なんて分からない。

2人がそういう関係だなんて、どこにも保証はないのに。

仮にそうだったとしても、私には関係ないはずなのに。





(…嫌だっ、)




震える手に汗が滲む。

怖くて怖くて堪らない。

唇を噛み締めて、ぼーっとする頭を無理矢理動かして、逃げるように来た道を引き返す。





何があったかなんて知らない。
知りたくもないけど。

今、あの子の隣にいて、あの子の微笑みの先にいるのは、紛れもなくマルちゃん以外の人なのに。





(…嫌だ、)





マルちゃんを奪われないなら。

マルちゃんを忘れてくれてたら。

マルちゃんを嫌いになってたら。




私にとっては、全部、好都合のはずなのに。





(…何で、)





何で、こんなに、苦しいの?



暗闇に包まれた雑踏は、ちっぽけな私の、弱い心を簡単に飲み込んで隠してく。



助けて。

叫びたいのに、声が出ない。

代わりにひゅーひゅーと風のような呼吸だけが、風と一緒に夜空に消えていく。





分かってる。

遠いところにいるはずのあの子が、こんなにも近くにいることが。

マルちゃんの手の届くところにいることが。

本当のマルちゃんを見失った、今の私にとって、1番の恐怖だってこと。





ずっと前から、分かってたはずなのに。





「…A?」

「…ぉ、…くら、」

「ちょっ、」





訳も分からず走り出した脚が向かったのは、"ほくほく"でも、自分の家でもなく。

とっくにシャッターの閉まった、すぐ隣の花屋だった。







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千香(プロフ) - ゆんゆさん» いつもコメントありがとうございます。<(_ _)> 構ってもらえるだけでも幸せなのに、振り向いてもらえない現実は痛いなぁと青色さんに限らず思ってます。(笑)三角関係が更に広がっていく予定なので、のんびり更新ですがこれからもよろしくお願いします! (2018年9月21日 22時) (レス) id: 6d1e446494 (このIDを非表示/違反報告)
千香(プロフ) - ◎◎さん» いつもコメントありがとうございます。<(_ _)> のんびり更新ですが、これからも楽しみにしていてくださると嬉しいです! (2018年9月21日 22時) (レス) id: 6d1e446494 (このIDを非表示/違反報告)
ゆんゆ(プロフ) - みんなが幸せになってほしい…もちろん難しいんですよ。誰かを好きになるなる事は、知らず知らずに誰かを傷つけてるって。でもね、どうかみんなの気持ちが救われますように…って、全然感想じゃない!ごめんなさい笑 (2018年9月21日 0時) (レス) id: e91edee03b (このIDを非表示/違反報告)
◎◎(プロフ) - ドキドキが止まりません!これからも楽しみにしています! (2018年7月17日 0時) (レス) id: 8846a7498c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:千香 | 作成日時:2018年6月16日 23時

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