カゼカオル【Red】 (ページ1)

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１．三角恋愛ページ1

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手をつながない

キスもしない

一緒に寝なければ

体だって重ねたことない

たまにふらっと来てご飯を食べたら

朝にはもう仕事に行っている

どこが仕事場なのか知らないし

何してるのかさえ教えてくれない

分かってるのは

名前と、少し年上で

お酒が好きってことだけ

「薫さん、」

「…何や」

渋沢薫

少し長い髪とひげと

小さなメガネをかけた

無愛想よりの無口

24時間、お酒の匂いのする服

顔や腕に傷ができた日は

わりと多めにご飯を食べる

これでも一応

付き合ってそれなりの

私のカレ

「おかわり、いります？」

「今日はえぇ」

「そう、ですか」

ご飯だけ食べにくる男の人に

ご飯だけを作る生活にも

もうそろそろ慣れてきた

…慣れすぎて、飽きてきた

嫌な話

最近、薫さんが食べなくなったのを見て

そのうち私の家に来ることもなく

置いてかれるんじゃないかって

変な心配をし始めてる

「かおる、さん」

「何や」

「その…日曜日って、空いてたりします？」

「…や、」

一応彼氏なのに

未だに敬語は抜けないし

約束は全部断られるから

デートだってできない

普通の恋人みたいなエピソードが

私たちには何もない

「…帰る」

「ぇ、ぁの、薫さんっ、」

「うまかった。…ありがとう」

…普通のエピソードはないけど

薫さんは”ありがとう”だけは上手に言える

”うまい”も、たまに言ってくれる

これだから

簡単には嫌いになれなくて

「ぁ、…あと、」

「…何ですか？」

「…またな、

A」

”またな”はたった１つだけ

薫さんとできる約束だから

何だかんだ言いつつ

結局待っちゃってる私がいる

＋