100万回の愛してる、【佐野真一郎】

切愛.23 ページ23

真一郎「Aちゃんってさ」
貴「うん？｣

バイクだから少し大きい彼の声
それにつられて私も大きめの声を出した

真一郎「今まで何人と付き合ったことあんの？言いたくなかったら大丈夫なんだけどさ」

最後の言葉に優しさが込められていると思う
言いたくないなら言わなくていい、って

私を気遣ってくれる
真一郎くんはどうしてモテないんだろう

彼を知れば知るほど不思議
かっこよくて背も高くて優しい人なのに

貴「…私は3人、かな…真一郎くんは？｣
真一郎「それ聞いちゃいます？ゼロだよゼロ」

貴「え、意外だなぁ…｣
付き合ったことはあるんだと思ってた

告白20連敗って言ってたけど…
真一郎くん25歳だし

初めて告白したのが5歳だとしても
1年に1回ペースで振られてるってことだよね…？

結構惚れっぽいんだな
真一郎「最後の彼氏とはいつ別れたんだ？」

貴「どうだろう…20歳くらいだったかな…？｣
多分もう7年前くらいだと思うけど…

真一郎「マジで？Aちゃんモテるだろ？」
貴「うーん…答えにくい質問するね…｣

モテない、とは言えないんだと思う
何度か告白してもらったこともあるし

勿論、私よりもモテる人は沢山いるだろうけど
全くないとは言えない

貴「彼氏はいたことはあるけど、人を好きになったことがなくて……最低だよね｣

好きじゃない人と付き合っていた
好きがどんな感覚なのか分からなくて

真一郎「…そっか…んじゃ、俺がAちゃんの初恋の男になれるかもしんねぇんだな」

貴「え、｣
真一郎「Aちゃんの初恋かっさらうわ」

徐々にバイクのスピードが落ちてゆっくり止まる
さっき教えたばかりの私の家の前だ

振り返った真一郎くんが笑う
真一郎「ぜってぇAちゃんの初恋の男になるから」

貴「……うん｣
そんなふうに言ってもらえるなんて思わなかった

真一郎「Aちゃんが好きです。付き合ってほしい」
貴「…ごめんなさい｣

真一郎「くっそー…今いい流れだったろ…」
冗談っぽく

それでも悔しそうに笑った
私からヘルメットを取ると頭を撫でられた

真一郎「じゃあな、おやすみ」
貴「…おやすみなさい｣

バイクの排気音がして彼の背中が遠ざかっていく
…心臓が少しだけ痛かった

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