100万回の愛してる、【佐野真一郎】

切愛.16 ページ16

今牛「Aちゃん？」
貴「あ、ワカくん｣

後ろから声をかけられて振り向くと
バイクに乗ったワカくんが

今牛「どこ行くの」
貴「真一郎くんのお店に｣

今牛「今日休みだよ」
貴「え…そうなんだ…｣

真一郎くんに確認してからこれば良かった…
早く返さなきゃって気にしてなかった…

今牛「シンちゃんに用事？」
貴「うん、借りたもの返したくて…｣

そう言えばワカくんは私の荷物を取って
後ろを指さした

今牛「乗ってきなよ。俺もシンちゃんとこ行くからさ」
貴「私が行っても大丈夫かな…？｣

なんのアポも取ってないのに
お店じゃなくてお家に行くなんて

今牛「いいって。ゼッタイ喜ぶ」
貴「そうかな…｣

ワカくんに催促されザリの後ろに乗る
今牛「ケーキ？大事に運ぶワ」

貴「ケーキじゃないけど大事にしてくれると嬉しい｣
崩れないように詰めてあるけど

人にあげるものだからね
ワカくんのバイクで数分間

着いたのは大きな和風の建物だった
すごい…広い…

今牛「シンちゃーん」
慣れた様子で敷居をまたいで進んでいく彼を追う

今牛「…昔のシンちゃんリーゼントでくそダサいから写真見せてもらおうよ」

そう言って薄く笑うワカくん
真一郎「悪ぃ、風呂はいって、た…うわっ！？」

私と目が合うと
大慌てで隠れてしまった

真一郎くんはズボンしか履いてなくて
それから濡れた髪をかきあげていた

…さっきワカくんがいってたリーゼントみたいに
全然かっこいいけど…

ワカくんは毎日自分を鏡で見てるから
ダサいの感覚がおかしくなってるんだと思う

真一郎「ワカサン！？Aちゃん連れてくんなら言えよ！？そしたらこんなダセェ格好で出ねぇのにさっ！」

今牛「ごめんネ」
バタバタと走り回る音がする

…忙しい人だなぁ
思わず笑ってしまう

今牛「…Aちゃん上がろうぜ」
そう言うと靴を脱いで行ってしまう

貴「え、あ、お邪魔します…！｣
勝手に入っちゃって良かったのかな…？

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