第36夜 ページ36
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本当はどこかで気付いていて、見ていないフリをしていただけなのかもしれない。
でも____ついに、見て見ぬふりをするのはおしまいにする時が来た。
そう、目の前で意識を失った彼女を見て強く思う。
俺は思い出した、自分が何者なのか、どうやって過ごしてきたのか、彼女との関係、どうしてここに来たか………
一気に記憶が戻ってきたせいで気分の悪さを感じるが、そんなもの目の前の光景に比べれば軽い方だ。
突然失踪して、会えたと思ったら記憶を失っていて、しかも命を奪われかける、こんなの、嫌いになっても何もおかしくない。
それでも彼女は俺を好きだと言ってくれた。姿形が変わろうと、俺は俺だ、と。
そんな彼女といると安心感を感じていた。
じんわりと心が暖かくなって、幸せな気分になっていた。
なんなら、過去の俺に嫉妬すら覚えていたかもしれない。
彼女の言う通り、姿形が違っても俺は俺だ。
何せ、ずっと惚れているのだから。
許されないかもしれない、でも許されるのなら、隣に居たい。
心残りがない、と言ったら嘘になるが、俺の居場所はここじゃない。
心の中で1つ決心をすると、まだ弱い脈がある彼女を抱き抱えてうらさんに近寄る。
｢……なに｣
｢俺はもう、客でも一員でもあらへん。……でも、直したって、くれませんか｣
｢本当に、………人間って、勝手な生き物だよね。………ま、馬鹿正直にルールに従って記憶を取り戻した子かいるんだ、今回はその子に免じてあげるよ｣
Aをうらさんに手渡すと、理解不能な謎の言語と共に血が泊まっていく。
あの様子だとそんなに時間はかからず傷は治るだろう、と判断し、次は坂田の方へ向いた。
｢…………坂田、｣
｢言うておくけど！これが必ず成功するとは限らない、記憶とかまた忘れて元の体に戻る、とかもありえるんやで…！？｣
どうやら俺が言おうとしてることは分かっているらしい。
それならば話は早い、と話を続ける。
｢でも、あいつのことを好きって気持ちは忘れないって自信があるから、大丈夫や｣
｢……分からへん、人間はどうしてそこまでするんやろ｣
ぽつりと呟かれた坂田の問いに俺は答えない。
きっと、坂田にもその答えを教えてくれる人が現れるはずだから。
とにかく、この体とは、もうお別れの時間。
｢……じゃあ、な｣
そう呟くと、俺は坂田に身を任せることにした。
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クロナ - 涙目になりながら読ませて頂きました。とても面白い話でした！ (2019年1月23日 0時) (
レス) id: 95383b2889 (このIDを非表示/違反報告)
心愛 - とてもよっかたです！夢主ちゃんと四人が再会するお話とかその後話が欲しいです！ (2018年11月27日 21時) (レス) id: 1b1d47c664 (このIDを非表示/違反報告)
史緒(プロフ) - ゆづきさん» コメントありがとうございます、まだまだ拙い文ですがそう言っていただけて感無量です…！閲覧ありがとうございました！ (2018年10月31日 7時) (レス) id: 5df9928a5a (このIDを非表示/違反報告)
史緒(プロフ) - つぼみさん» コメントありがとうございます、少しでも作品の雰囲気を楽しんでいただけでとても嬉しいです！期待に応えられるよう頑張ります！！ (2018年10月31日 7時) (レス) id: 5df9928a5a (このIDを非表示/違反報告)
ゆづき - 感動した。ただその一言です！愛が感じられるとても素敵な作品でした！ (2018年10月30日 18時) (レス) id: 5ea47c424e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：史緒 | 作成日時：2018年10月3日 23時
