第22夜 ページ22
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____僅かな痛みから、私の意識は呼び起こされた。
それはほんの少しの痛み、トゲが指先に触れてしまっただけのような、かわいらしいもの。
でも、それだけでも私の沈んでいた意識が浮上するには充分だった。
目を開ける。目の前に広がる光景には見覚えがあった。
見覚えがある、というよりは、先程見たばかりの薄暗い空間、もう立ち入らないように、と志麻から言われた場所。
なんでここにいるんだろう。
私、さっきまで坂田さんの部屋にいたはずなのに。
視界が明確になった頃、坂田さんが私の様子の変化に気付いたのか近寄ってくる。
｢起きた？痛いとこはない？手も足もちゃんと動く？｣
寝起き、というのは少し違うが、寝起きのような状態の脳にそんな質問責めされてもすぐに答えられない。
とりあえず軽く手足を動かしてみる。思った通りに動くため異常はない。
｢大丈夫です、でも、なんか痛くて目が覚めたんですけど｣
｢あーそれは薬のせいやから気にせんでええよ、今は痛くないやろ？｣
この人、もう自分がやっていることを隠すつもりもないのだろう。
しかし痛みがないのは事実であると同時に、なんの薬を盛られたのかと不安にもなる。
それよりも、一番不安なのはこれから行われること。
意識を失う前の坂田さんの発言からして、多分、だけど私は坂田さんの『実験台』になってしまう。
志麻の意識が今のゾンビの体に移されたように、私の意識もどこか別のものに移されてしまうんじゃないか。
そう考えただけで、鳥肌が全身を駆け巡る。
坂田さんは何も言わず、注射器を片手に持ち近付いてくる。
それから逃げるように後退するが限界はくるもので、すぐに背中に壁の冷たい感触を感じた。
｢来ないで、ください｣
｢痛いのはちょっとだけやからだいじょーぶ、ほら、平気やから｣
坂田さんは私に向かって手を伸ばすが、案の定うらたぬきさんの加護が仕事をしている。
少し眉をひそめる坂田さんだが、それでも手を伸ばすことをやめようとしない。
バチバチと抵抗するように音を立てていた加護が、その音がどんどん弱まってくる。
あ、まずい、と思った時にはすでに遅くて。
｢つかまえた｣
私には何も見えない。
何も聞こえない。
でも、確実に、私を守っていた何かが崩れ落ちた。
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クロナ - 涙目になりながら読ませて頂きました。とても面白い話でした！ (2019年1月23日 0時) (
レス) id: 95383b2889 (このIDを非表示/違反報告)
心愛 - とてもよっかたです！夢主ちゃんと四人が再会するお話とかその後話が欲しいです！ (2018年11月27日 21時) (レス) id: 1b1d47c664 (このIDを非表示/違反報告)
史緒(プロフ) - ゆづきさん» コメントありがとうございます、まだまだ拙い文ですがそう言っていただけて感無量です…！閲覧ありがとうございました！ (2018年10月31日 7時) (レス) id: 5df9928a5a (このIDを非表示/違反報告)
史緒(プロフ) - つぼみさん» コメントありがとうございます、少しでも作品の雰囲気を楽しんでいただけでとても嬉しいです！期待に応えられるよう頑張ります！！ (2018年10月31日 7時) (レス) id: 5df9928a5a (このIDを非表示/違反報告)
ゆづき - 感動した。ただその一言です！愛が感じられるとても素敵な作品でした！ (2018年10月30日 18時) (レス) id: 5ea47c424e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：史緒 | 作成日時：2018年10月3日 23時
