第13夜 ページ13
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そうだ、記憶を取り戻していない今の志麻は私を食べることになんの躊躇いも感じていない。
命の危機を感じたと同時に、志麻の手がこちらへ伸びてきて_____弾かれた。
うらたぬきさんの、加護だ。
私は何度これに助けられているんだろう、と思いながらうらたぬきさんに感謝する。
志麻はというと痛みから正気を取り戻したのか、いつも通りの志麻に戻っていた。
｢志麻、平気？｣
｢…いやお前頭おかしいんちゃう、俺今お前のこと食おうとしたんやで、なんでそんな平然としてるん｣
｢だって食べられてないし｣
｢そういうんやなくてやな……｣
言葉の途中だが志麻はこれ以上言うのをやめたのか、くしゃりと髪をかきあげる。
そんな仕草にいけめんだな、と感じるあたり、まだ余裕があるのかもしれない。
手を伸ばせば、志麻は私の手を軽く掴んで立ち上がる。
私はほんの一瞬、近付いた時に違和感を感じた。
……臭いが、しない？
それどころか、どことなく爽やかなせっけんの匂いすらしたような………
｢志麻、もしかして____｣
｢お客さんは早起きやな〜、…あれ、まーしぃも起きてるの珍しいやん｣
感じた疑問について尋ねようとしたところ、廊下から坂田さんがやってくる。
頭には寝癖がついており、欠伸をしながらやってくる姿はまるで小さい子どものようだ。
志麻の姿を見て目を丸くした後に、ああ！と言ってにっ、と笑みを浮かべた。
｢分かった！昨日風呂入るなんて慣れないことしたからやろ！｣
____まさか、聞こうとしたことを坂田さんの口から語られるとは。
志麻の方を向けば、図星なのかわなわなと震え拳を力強く握っている。
薄らと顔も赤く、相当バレたのが恥ずかしいんだろう。
｢………坂田｣
｢ん？どうしたんまーしぃ｣
｢とりあえずいっぺん地獄に落ちてこいやぁ！！｣
派手な照れ隠しか、それとも怒っているのか、志麻は坂田さんを追いかけ回し、坂田さんも坂田さんで船内を走り回る。
そんな様子を眺めながら、これはセンラさんとうらたぬきさんが起きてくるのも時間の問題かもな、なんて考えた。
志麻は、もしかして気にしていたのだろうか。
私がくさい、って言ったこと。
それを気にして、わざわざ必要のない風呂に入る、という行動をしたのだろうか。
そう考えたら、自然と口角が緩んでしまった。
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クロナ - 涙目になりながら読ませて頂きました。とても面白い話でした！ (2019年1月23日 0時) (
レス) id: 95383b2889 (このIDを非表示/違反報告)
心愛 - とてもよっかたです！夢主ちゃんと四人が再会するお話とかその後話が欲しいです！ (2018年11月27日 21時) (レス) id: 1b1d47c664 (このIDを非表示/違反報告)
史緒(プロフ) - ゆづきさん» コメントありがとうございます、まだまだ拙い文ですがそう言っていただけて感無量です…！閲覧ありがとうございました！ (2018年10月31日 7時) (レス) id: 5df9928a5a (このIDを非表示/違反報告)
史緒(プロフ) - つぼみさん» コメントありがとうございます、少しでも作品の雰囲気を楽しんでいただけでとても嬉しいです！期待に応えられるよう頑張ります！！ (2018年10月31日 7時) (レス) id: 5df9928a5a (このIDを非表示/違反報告)
ゆづき - 感動した。ただその一言です！愛が感じられるとても素敵な作品でした！ (2018年10月30日 18時) (レス) id: 5ea47c424e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：史緒 | 作成日時：2018年10月3日 23時
