第8夜 ページ8
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志麻は瓶を受け取ると1粒取り出し、水もないのにそのまま飲み込む。
治ったのかはよく分からないが、顔色は良くなったような気がした。
｢まーしぃな、よくこうやって体調崩すんよ、しばらく経てば治ってたからほっといてたんやけど、最近頻度が多くなってきたから俺が薬作ってん｣
すごいやろ、とドヤ顔してくる坂田さんに思わず頷いてしまう。
病名も分からない、何が原因なのかも分からない症状を治す薬を作り出すとかこの人はいったいう頭脳を持っているのか。
｢ありがとな坂田、助かった｣
｢いーえ！無くなったらまた俺のとこ来てな！｣
そう言うと坂田さんは私達に手を振って部屋を出ていく。
なんだか、台風のような人だったな。
再び訪れた2人きりの空気。
先程のこともあってか何から話せばいいか分からずに沈黙が続くが、それを破ったのは志麻の方だった。
｢……俺、分からへんねん。気付いたらここで暮らしてて、周りにあいつらがいて。人間を食べるのが普通で、……でも、その前のことはなんも覚えとらん。もしかしたらお前が言うように人間、ってこともあるのかもな｣
そう語る志麻の表情が、声色がとても悲しくて、私の心が締め付けられるのを感じる。
志麻は、何も悪くない。
人を食べる、という行為は悪いことなのかもしれないけど、志麻にとってはそれが常識なんだ。
でも、故意に私を忘れたわけじゃない。
それが分かっただけでも、なんだか嬉しくて、ほんの少し今の志麻を知れたようだった。
｢多分、今の俺はお前が知ってる『志麻』やないで、それでも俺の事好きなん？｣
｢好きだよ、形や在り方が変わっても、志麻は志麻だし、そんな志麻も好きなんだ｣
｢生意気な人間やな｣
目を細めて、馬鹿にするように笑われる。
しかしこちらを見る視線は暖かく、ああ、まただ、なんて懐かしい感情に襲われた。
人間じゃなくてゾンビになった。
肉とか魚とかじゃなくて人間を食べるようになった。
でも、志麻のこういった根本的なところは何も変わってない。
それだけで、充分なんだ。
｢…………あ、でも、くさくなったのはちょっと｣
｢誰がくさいやねん、しゃーないやろこれは！ほんっま生意気やな｣
時間を忘れて私達は話し続けた。
まるで、1年前に戻ったような気分になれた。
この時間が、ずっと続いてくれたらいいのに。
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クロナ - 涙目になりながら読ませて頂きました。とても面白い話でした！ (2019年1月23日 0時) (
レス) id: 95383b2889 (このIDを非表示/違反報告)
心愛 - とてもよっかたです！夢主ちゃんと四人が再会するお話とかその後話が欲しいです！ (2018年11月27日 21時) (レス) id: 1b1d47c664 (このIDを非表示/違反報告)
史緒(プロフ) - ゆづきさん» コメントありがとうございます、まだまだ拙い文ですがそう言っていただけて感無量です…！閲覧ありがとうございました！ (2018年10月31日 7時) (レス) id: 5df9928a5a (このIDを非表示/違反報告)
史緒(プロフ) - つぼみさん» コメントありがとうございます、少しでも作品の雰囲気を楽しんでいただけでとても嬉しいです！期待に応えられるよう頑張ります！！ (2018年10月31日 7時) (レス) id: 5df9928a5a (このIDを非表示/違反報告)
ゆづき - 感動した。ただその一言です！愛が感じられるとても素敵な作品でした！ (2018年10月30日 18時) (レス) id: 5ea47c424e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：史緒 | 作成日時：2018年10月3日 23時
