第29夜 ページ29
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部屋に沈黙が流れる。
センラさんの問いは私に向けて、ではなく志麻に向けて、だろう。
その証拠に、センラさんの視線は志麻を捉えている。
｢………そうしたら、なんか変わるん｣
｢多分なんも起きへんよ、…あー、でも、ちょっとでも記憶を思い出す手がかりにはなるんちゃうかな｣
そう言ってちら、と私を見てきたセンラさんから思わず視線を逸らしてしまう。
ここで口を出すのは良くない、我慢。
だって決めるのは志麻なんだから。
｢ま、興味が無い、って言ったら嘘になるし、見るだけ見てみるわ｣
｢ほんならさっきの倉庫行ってみ、うらたんと坂田がおるはずやから｣
｢は？お前は来ないん｣
｢俺はちょーっと、このお客さんとお話があるんで｣
センラさんがそんなことを口走ったかと思うと、ぐい、とセンラさんのほうへ手を引かれる。
突然のことで抵抗もできず、気付いた時にはすぐ側にセンラさんがいた。
それを見た志麻の眉間にシワが寄っていたような気がしたのだが、私の気のせいだろうか。
｢______お前｣
｢志麻くん、なーに熱くなってるん？この子は"ただの人間の客"やないん？｣
｢あの、センラさん、ちょっと距離取りましょう、距離｣
私の言葉を無視するどころかなんだかさっきより近くなっている気がする。
志麻を煽るような口調で話しているのが見事に効いたのか、志麻は1歩こちらに近付いて___止まった。
少し怯えながらも次の行動を待っていると、志麻は1つ舌打ちをつき、私達を通り過ぎて扉の方へ向かう。
｢手出すなよ、言うとくけどそいつは"お前らの客"やなくて"俺に用がある客"やからな｣
それだけ言い残して、部屋から出て行ってしまった。
扉の開け閉めがやたら乱暴だったような。
志麻が部屋がいなくなったと同時に掴まれていた手は離れ、距離も離れる。
お互いに向かい合い、センラさんがあの胡散臭い笑顔を浮かべていた。
｢さて、ほな、宿題の答え合わせ、とでもいきましょか？｣
｢答え合わせ……？｣
｢ほら、昨日の。記憶を取り戻したらどうしたいかーって。本当はもっと遅くてもええんやろうけど……ほんまに記憶戻りそうやからなあ｣
この人は志麻の何を見て戻りそうと思ったんだろう。
それに越したことはないけれど。
しかし、こんなに早く尋ねられるとは思ってなかった、と言葉に詰まってしまう。
｢手出すな、って言われてんけど…変な事言うたら、その首折ってまいそうやわ｣
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クロナ - 涙目になりながら読ませて頂きました。とても面白い話でした！ (2019年1月23日 0時) (
レス) id: 95383b2889 (このIDを非表示/違反報告)
心愛 - とてもよっかたです！夢主ちゃんと四人が再会するお話とかその後話が欲しいです！ (2018年11月27日 21時) (レス) id: 1b1d47c664 (このIDを非表示/違反報告)
史緒(プロフ) - ゆづきさん» コメントありがとうございます、まだまだ拙い文ですがそう言っていただけて感無量です…！閲覧ありがとうございました！ (2018年10月31日 7時) (レス) id: 5df9928a5a (このIDを非表示/違反報告)
史緒(プロフ) - つぼみさん» コメントありがとうございます、少しでも作品の雰囲気を楽しんでいただけでとても嬉しいです！期待に応えられるよう頑張ります！！ (2018年10月31日 7時) (レス) id: 5df9928a5a (このIDを非表示/違反報告)
ゆづき - 感動した。ただその一言です！愛が感じられるとても素敵な作品でした！ (2018年10月30日 18時) (レス) id: 5ea47c424e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：史緒 | 作成日時：2018年10月3日 23時
