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そして、俺が1番恐れていた事態がやってくる。
「今日は4人で動画撮るって言って____」
「っちょ、うらたんそれはあかんって!」
うらたんに悪気がないのは分かっているし、俺がここで反応してしまったのが悪いのもある。
いや、よくよく考えればAが俺の部屋に入ってしまったことに気付いた時点で覚悟することだったのかもしれない。
とにかく、間が悪かった。
「………センラ、動画って」
ああ、バレてしまった。
俺の活動のこと、そしてそれを言っていなかったこと。
案の定3人からは鋭い言葉をうけ、Aからは興味で満ちた目を向けられる。
こんな状態になって言わない、なんて選択肢は無いも同然だ。
「……Aさ、歌い手って、知っとる?」
心無しか小さくなってしまった声。
しかし彼女は聞き逃しはしなかった………のだが、俺を見つめたまま数秒固まってしまう。
俺は結局自分が歌い手だということを彼女に告げた。
彼女は何も言わない、きっと、すぐに受け入れられるようなことじゃないんだろう。
受け入れられなかったらどうしよう、と目を伏せる俺を他所に、3人はまるで保護者のように俺らのやり取りを見守っている。
なんやねんこいつら、1回しばきまわしたろか。
「………ううん、大丈夫、言ってくれてありがとう」
長い沈黙の後、彼女は笑顔と共にそう言ってくれた。
なんだかその笑顔で俺は許されたような気がして、思わずこっちも表情が緩んでしまう。
___その後にうらたんと坂田にちょっかいかけられたのは俺は許さんけど。
「良かったじゃん、理解ある子で」
「ええ子やん、センラにはもったいないくらいやわ〜!」
「うっさいうっさい、手出しはせんといてや」
そうやって、こそこそと3人で話していたからなのか、俺はまーしぃとAが話していることなんて、気付かずにいた。
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作者名:史緒 | 作成日時:2018年9月12日 0時