シンデレラ・コール《雪＿dt × nb 》 (ページ4)

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魔法のハジマリ① ページ4

翌日。

今日は会社の創立記念日で休みなので、本来なら母さんから貰ったトマトを使って、パスタを作ろうとしてたはず。

なのに、なんで俺は＿＿＿

「ね。こっちのネイビーとわいん…れっど？、どっちがいい？」

「ネイビーも似合うけど、ワインレッドも新鮮で可愛いよ。たまには赤系もいいんじゃない？」

「……わかった、こっちにしてくる、！」

何故俺は翔太とショッピングモールに来てるんだ……？

しかも、ちゃっかりアドバイスまでしているんだ……？

………☆

遡ること４時間前。

普段の休日より早めに起きて、トマトソースを煮込んでたところ、電話がかかってきた。

(ん？翔太……？)

翔太へモーニングコールするのは基本会社があるときだけ。なのに何故？

疑問に思いつつも、通話ボタンを押した。

「もしもし、翔太？どうし…」

『涼太？ちょっといい？』

俺を遮ってきたのは、毎朝聞き慣れた掠れた声じゃなくて、よく通る彼の美しい声。

「いいけど、珍しいね。どうしたの？」

急ではあったけど、滅多にない彼からの電話。
翔太からかけてくれたのが嬉しくて、簡単に返事をしちゃったのが間違いだったかも。

向こうで少しだけ息を呑む音が聞こえた。

　

『………ねぇ涼太。今日から俺の王子様になってよ』

「は？」

え？

突然の幼馴染の発言に、無愛想な反応で返してしまったのは許してほしい。

当の本人は俺を置いてけぼりに、淡々と話を進めていく。

『＿＿会って話したいんだけど、涼太ん家、今から行っちゃダメ…？』

「……わかった。玄関まで来たら連絡してね。」

『ん、じゃ後で。』

ツーツー……

通話を終えたと同時に、ソファに身を預ける。

「もうよくわかんないよ……」

俺が、翔太の王子様………？

あの幼馴染はいきなり何を言い出すのだろう。

そんな今まで願ってたって叶いもしなかったことをさらりと言って。

その真意が俺には理解できなかった。

が、結局は。

"涼太ん家、今から行っちゃダメ…？"

可愛いおねだりに負けた俺の頬は、人に見せられないくらいに緩んでるのだから、惚れた弱みというのはもうどうしようもないのだ。

「翔太の恋人(王子様)なんて、ずっとなりたいと思ってるよ＿＿。」

＿＿口に出せたことはまだ一度もないんだけれど。

自分の虚しい独り言は、トマトソースがほんのり香る部屋に静かに溶けていった。