▼15 防犯ブザーの予行練習 ページ15
「…なにこれ」
「見てわかんない？防犯ブザー」
いつものように迎えに来てくれたあろまに店長から貰ったケーキがあったので、うちに上がってもらってお茶を用意している時だった。
ローテーブルに紅茶の入ったカップとお皿に乗せたケーキを運んで彼の隣に腰掛けると思い出したようにカバンから何かを取り出した。
そして、手を出してと言われなにも考えず手を出すと握らされたのは防犯ブザー。
「いや、見てわかるから聞いてんの」
「はぁ？何言ってんの？」
いやいや、それこっちのセリフ。
「もしも元彼が襲って来た時はそれ押せ。周りに誰もいなくても相手は焦るだろ」
木苺のタルトを一口食べて「うま」と小さく呟く。私も自分のモンブランを頬張る。
「んー、おいしい！」
「一口ちょうだい」
「あ」
返事をする前に一口と言うには少し大きい一口をあろまは頬張った。
「これ店で出してるんでしょ？ なかなか美味いね」
「店長の知り合いがケーキ屋さんでそこから毎日仕入れてるの」
「だよねー」
「え？」
「あのいかつそうな店長が作ってたらどうしようかと思ったわ」
それはなかなか店長に失礼じゃないか？
頬っぺたいっぱいにケーキを頬張って、モグモグと口を動かすあろまはハムスターみたい。
ごくんと飲み飲むとティーカップを手に取ってフーフーと息を吹きかける。
一口飲むと熱かったのか眉をしかめた。
「ん、防犯ブザーの練習しとく？」
「はい？」
いざ本当に災害とかが起きたらちゃんと対応出来るようにと避難訓練を行うそれ的な？
手の中の防犯ブザーを見る。
「ほらやるべ」
そう言われあろまに目を向ければグッと寄せられる距離。
私の両側に腕を伸ばし覆い被さるような体勢に。
「ちょちょちょ、何やってんの？！」
いきなりのことに慌ててあろまの肩を押す。
「ほら、練習！」
「はぃぃい？」
困惑する私とは裏腹になんだか楽しそうな顔をするあろま。
近い近い！無理！
顔だけじゃなくて体中が熱く熱を持っている。
ブザーに着く紐に手をかけて思いっきり引っ張ると、耳をつんざくような音が鳴り響く。
自分で引っ張ったのだけどびっくりして、慌てて紐を戻そうとするとそれは床に落ちてった。
私が拾うよりも早くあろまが拾って、それを私の手にあるブザーの本体に差し込んで音は鳴り止んだ。
「そんなんじゃ襲われるよ？」
こいつは絶対に楽しんでやがる…。
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有馬(プロフ) - 007さん» ありがとうございます！ついに最終章です！楽しんでいただけるように頑張りますのでお待ちくださいませ！ (2018年12月15日 9時) (
レス) id: adf3e71480 (このIDを非表示/違反報告)
007(プロフ) - 2章完結おめです！ついに最終章ですか…楽しみです！ (2018年12月15日 0時) (レス) id: 378ccf97ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：有馬 | 作成日時：2018年11月9日 10時
