新しい朝がきたら4 ページ44
「でも……俺らお菓子なんて全然知らんくて……」
「そうか、そういうこともあるよね。誰か食べてみたいものとかないの？」
「そういえばまだ作る品が決まってないなんて珍しいね？」
「いやぁ、昨日まではパイを焼こうかと思ってたんですけどね、子どもが来るならその子たちに訊いた方が喜ばれるかな、と」
「いい考えだね……そうだ、君たち食べられないものはあるかい？ 別に好き嫌いに限った話ではなくて、身体が受けつけない食材なんかがあるんだが……」
「うけつけない、ですか？」
「そう、蕁麻疹や咳や腹痛や……病気にかかった時の症状がごく短時間の間にでるものだね。程度によっては命に関わるから早めに把握しておきたい。心当たりはあるかな？ 今まで食べたあと動けなくなるようなものはあったかい」
もっと早く気にしておくべきだったな、と内心舌打ちする。
一瞬お互いを窺った後、鬱が手を挙げた。
「ぼく、実はモモとかリンゴが食べられないんですけど」
気負わない仕草にありがたいものとどこか不穏な空気を感じながらも、鬱の申告にそうかと頷く。
「桃や林檎……薔薇の仲間かな、わかったよ」
「そうかぁ、じゃあ何にしようかなぁ……」
「……たしか、ナッツがまだ余っていたんじゃなかった？」
カルヴァンの表情がぱっと明るくなる。
「あっ！ そうですね！ ならマフィンを焼こうかな！ うんうん、パイシートで巻くのもいいかもしれませんね！ あとはそうだな、クッキーと、砕いてスコーンのクリームにも入れませんか？ 入れましょう！ それからえっと、」
いつまででもしゃべり続けそうなカルヴァンを再び窘める。
「カーァルヴァーン？」
「はい！ 申し訳ございません！ あとはシャロンと相談します！」
「そうして」
「仰せの通りに！ ……あ、そうだ、君らさ、」
人好きのする方のカルヴァンは子どもたちにいたずらっぽく笑う。
「我ら料理番はいつでも、かわいい味見係を待ってるからね」
遊びにおいで、と彼は一番近くにいた鬱の頭を撫でる。不健康そうな頬に一刷毛朱が差して、紺青の瞳が少し潤んで伏せられた。
いつの時代も料理番の手は水仕事で荒れていて、でも出汁と砂糖の優しい匂いがする。昔を懐かしむと思わず笑みが零れた。
「……つまみ食いさせる時には周りに気をつけなさいね」
「そうなんですよね！ 侍従長にバレたら叱られるので！ ぼくが！」
勢いの良すぎるカルヴァンの居直りに鬱はふふふと笑ってくれた。
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咲季 - 1000票目頂きました…！面白かったです。続編も読ませていただきました！！ (2022年1月10日 19時) (
レス) @page1 id: 96347ca1af (このIDを非表示/違反報告)
ﾅﾐｦの家のあろさうるす - オークションパロってはじめて見たんですが、とっても素晴らしいです！更新待ってます！マンちゃんがかわいくて尊さに耐えきれず死にそうになりました！ (2020年4月4日 19時) (レス) id: 2e27670cb5 (このIDを非表示/違反報告)
吉野あまみず(プロフ) - bhさん» ありがとうございます！ 続編出来ました！ まだお待ちいただけてるでしょうか……？ 良かったら読んでくださいね！ (2020年3月7日 7時) (レス) id: dec961c083 (このIDを非表示/違反報告)
吉野あまみず(プロフ) - キャラメル中毒者さん» コメントありがとうございます！ 続編投稿致しました！ 楽しんでいただければ幸いです！ (2020年3月7日 7時) (レス) id: dec961c083 (このIDを非表示/違反報告)
bh(プロフ) - 大好きです、気長に更新待ってます、応援してます。 (2019年12月24日 12時) (レス) id: 204dfe46bb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：吉野あまみず | 作成日時：2019年8月22日 6時
