命の洗濯なんかを10 ページ30
戻ってきた年長にまた年少の面倒を見るよう頼んで、それぞれに軟膏の瓶を渡す。
少し離れたところから見ていると、一つの牢で生活していてもなんとなくの小さなまとまりはあるらしかった。まだ名乗ってもらっていないもう一人の年長者が軟膏を見て目を輝かせたので今度調剤室を見せてやろう、と予定に入れる。
怪我の仕方にもなんとなく傾向がある。エーミールが手当をしている翠眼の少年は手錠と首輪の幅の擦り傷が酷い。めちゃくちゃに暴れたのだろう、あれは痕が残るかもしれない。
目立った怪我がないのはショッピと同じくらいの背丈の、恐らく最年少らしき一人と、馬車で甘いコロンの香りをさせていた彼だ。なんとはなしに視線をやると、彼も私を見つめていた。
首を傾げて目だけで問うと、彼は他の子どもの間をするりと抜けて近づいてくる。
椅子のすぐ側まで来た向こうが口火を切るまでに数秒かかった。
「……俺がちっちゃいのの分まで役に立つから」
既に雲行きが怪しい。
私が座る椅子の肘掛けについ、と指を滑らせ、頬を寄せて耳元で囁く。
「要らなくなってもあいつらのこと捨てんといてな」
そんな媚び方を教えたのは誰だ? 吊るして晒す。
「何度も言うけれど。私は、自分のものは大切に扱う。猫に保護の対価は求めないし、意思ある個なら尚更だ」
なんというか、手に入れたものから「自分は無価値だ」と言われることに気が立っていたのかもしれない。
私の審美眼は間違っていない。だから買ってきたものにも価値がある。
肘掛けに置かれた手を掴んで押さえる。
「──私が手離すと思うなよ」
私の言葉に見開かれた深緑の瞳を睨んだ。見知らぬ前の主人と一緒にされるのは気にくわない。
「A、子どもたちが怯えます」
アガタに言われてはっと息を呑み周りを見渡す。何人かが私を見て固まっていて、しまった、と思った。
手で顔を覆って二度三度と息を吸って吐く。
「……すまない。脅かしたね。夕食にしよう」
2736人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
咲季 - 1000票目頂きました…!面白かったです。続編も読ませていただきました!! (2022年1月10日 19時) (レス) @page1 id: 96347ca1af (このIDを非表示/違反報告)
ナミヲの家のあろさうるす - オークションパロってはじめて見たんですが、とっても素晴らしいです!更新待ってます!マンちゃんがかわいくて尊さに耐えきれず死にそうになりました! (2020年4月4日 19時) (レス) id: 2e27670cb5 (このIDを非表示/違反報告)
吉野あまみず(プロフ) - bhさん» ありがとうございます! 続編出来ました! まだお待ちいただけてるでしょうか……? 良かったら読んでくださいね! (2020年3月7日 7時) (レス) id: dec961c083 (このIDを非表示/違反報告)
吉野あまみず(プロフ) - キャラメル中毒者さん» コメントありがとうございます! 続編投稿致しました! 楽しんでいただければ幸いです! (2020年3月7日 7時) (レス) id: dec961c083 (このIDを非表示/違反報告)
bh(プロフ) - 大好きです、気長に更新待ってます、応援してます。 (2019年12月24日 12時) (レス) id: 204dfe46bb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:吉野あまみず | 作成日時:2019年8月22日 6時