【d!】よしよし愛い愛い【オークションパロ】

瓜にかきたる云々3 ページ3

さて、大した理由もなく即決価格の5割増で子どもを落札したわけだが。契約書にサインするのはこの回が終わってからになるので、子どもが退場した後も自席に腰掛けてオークションを見守った。今日は人間の出品は彼だけだったらしく、特に目を引く物も無いままオークションは終了した。
　
　侍女と連れ立って声をかけてきた係員について行くと、売買契約を結ぶための応接間に通される。
　子どもは既にオークショニアとそこにいて、ソファの横に立っていた。
　
「本日は落札誠にありがとうございます。即決価格に上乗せなど……いやはやありがとうございます」
「構いません。それより早くサインをさせなさい」
　
　おもねるような表情のオークショニアを一蹴し、契約書を要求する。太客と認識されたらしいが、元々こういう場はあまり好かない。

「失礼いたしました。こちらをどうぞ」
　差し出された売買契約書を流し見る。そこそこまともな作りらしい、約款に不審な点は見当たらない。

　契約書にサインし終わると、オークショニアがこちらを伺うように話し始めた。
「それでですね、奥方様さえよろしければ、いやいや、これはほんの心遣いですが」
「何か？」
「こちらの品物にいくつか特典を付けさせていただければと」
　ちらと子どもを見やると、私が入ってきたのとは反対側、競売者側の扉をじっと見つめていた。……特典ね。
　
　だから私はそれほど良い客では……まぁいいか。
　
「そう？ ならありがたく」
「ありがとうございます。では、」
「ただ」
　
　はい？ とぽかんとした顔をするオークショニアに微笑む。
　
「なにを付けるかはその子に決めさせます」

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