ただ皆で幸せになりたい蛇の物語(賢者の石編) (ページ9)

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5話目(妹蛇の追憶) ページ9

黒髪の少年と出会ったのはそう……ホグワーツへの入学が決まり必要な物を買いに行った日だ。
ボクと手を繋いで歩いているドラコも前を歩いている両親も普段通りを装っているが……どこかピリピリとしている。
家族揃って出かける時はいつもこうだ……

ラ)ねぇ？兄様？今日は何を買うんだっけ？
ド)制服、教科書……あとは杖や鍋などの学用品だな。
はぁ、箒を持って行くのがダメだなんて信じられない……

ボクと手を繋ぎながら歩く兄に買うものを問いかければ明らかに不機嫌そうな声で返答が返ってきた。表情も不満そうだ。
そんなに箒を持って行けないのが気に食わないのか……
確かにボクも箒は欲しいけれど兄であるドラコが父に箒を買って欲しいと強請った事で、しっかりと怒られたのを見ている。
優しい父も怒ると怖いのだ……流石に同じ真似をしてボクまで怒られたくは無い。諦めるしかないのだ……
数日前の光景を思い出していれば父は教科書を買いに、母は杖を見に行くからその間に制服の採寸をして来いと言われた。
それに対しても不満そうに返事をする自身の片割れに苦笑を浮かべながら店へと向かう両親を見送った。

ド)マダム・マルキンの洋装店__普段着から式服まで__ね。
さっさと済ませよう。もう一度父上に箒を買って欲しいと頼みたいんだ
ラ)うわぁ……そこまでして欲しいの？あ、ボクの分もオネダリしておいてね

看板に書かれた文字を口に出しながら読み、フンっと鼻で笑った後に箒をもう一度強請るというドラコにボクのも頼むわ〜と軽く頼んでみると繋いでいた手を振り払われてしまった。
ボクの手を振り払い、巫山戯るな自分で頼めと言いたげにこちらを睨むドラコは何も言わずに店の扉を開けて早く入れといった様子で中を顎でしゃくった。
どうやら拗ねてしまったようだ。
店内へと入れば藤色ずくめの服を着た愛想の良さそうなずんぐりとした魔女が声を掛けてきた。
おそらくは彼女がマダム・マルキンだろう。

マ)あら？お嬢ちゃん達よく似てるわね。
あなた達ホグワーツなの？全部ここで揃いますよ
？)坊ちゃんはこっちにいらっしゃい。お嬢ちゃんはその隣の台に立ってね

店の扉を閉めてボクの隣に立つドラコは明らかに嫌そうな表情を浮かべながらも店の奥から声を掛けてきた魔女の方へと進み、踏台の上に立った。
まだボクが扉の近くに居るのに気付けばまた、早くしろと隣の踏台を視線で指し示す。
後で父にアイスでも買ってもらおうと心に決めて踏み台へと足を進める。