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「………………」
私は椎名を思い出したけれど。
あの子は、私のことを、覚えているのだろうか？
昨日すれ違ったとき、彼は驚いたような顔をしたけれど――あれは単に、あんな山の中に、自分以外にも下から登ってくる者がいたことに驚いただけなのかもしれない。
友達の姉貴なんて、普通、記憶には残らないだろうし……だとすれば、ここで声を掛けるのも変な話だ。
しかし。
蛇。
そう、蛇、だ――
している内に、椎名は、読んでいた本を本棚に戻し、その場から動き始めた。私は見つからないように、咄嗟に身を隠す。
別に隠れる理由もないのだが、ここで反射的に隠れてしまったことにより、声を掛けるタイミングは完全に逸してしまったことになる。
本棚を壁に、迂回するように私は歩いて、椎名の姿が見えなくなったのを確認し、先程まで彼がいた場所へと移動した。
何の本を読んでいたのか、気になったのだ。
私はそのタイトルを確認する。
「ちょっと……これは」
その本は――一万二千円の、ハードカバーだった。
中学二年生に買える本ではない。高校三年の私だって、今の手持ちじゃ無理だ。参考書が買えなくなってしまう。
だから、立ち読みで済ませていたのだろう。
だが――そんなことより。
問題は、そのタイトルだった。
私はその奥まったコーナーから出、店内に椎名の姿を探したが、既に彼は見当たらなかった。
別のコーナーの奥の方に入っていったのかもしれないが、もう店から出ていったと見る方が正しそうだ。それに、彼のあの私服……。
長袖、長ズボン。
深い帽子に、ウエストポーチ。
私の勘に間違いがなければ……というパターンだ。
「くそっ……しょうがないな」
とりあえず、参考書を買うためにレジへと向かう。レジには結構買い物客が並んでいたが、根気よく待った。
慌てて急いてもろくなことにならない。まずは冷静になるべきだ。どうするべきか考えながら、トレイに一万円札を置く。
レジの店員さんが、会計がぴったり一万円になったことに驚いているようだったが、それは私の功績ではないので、どうでもよかった。
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灰猫(プロフ) - realさん» 毎度コメントくださりありがとうございます！🙇♀️正直作者自身も過去に作った設定などを見返してはそこにそのキャラ置くんだ！？となっているので驚きながら書いていますw少しずつ更新していきますのでお待ち頂けると幸いです！ (2022年5月21日 11時) (
レス) id: e872c5e500 (このIDを非表示/違反報告)
real(プロフ) - 元まーかー、りょくちゃのやつです()毎度コメント失礼します＼(_ _)今回の配役は驚きましたが最高です😊更新楽しみにしてます！ (2022年5月19日 19時) (レス) id: f217387575 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：灰猫 | 作成日時：2022年5月5日 5時
